《ブラジル》今が最悪期「今後2週間は戦争」=医療崩壊の危機が全国に急拡大=変異株の感染力は倍以上か

ロックダウンで閉鎖された店と手持無沙汰の露天商ら(連邦直轄区、Fabio Rodrigues Pozzebom/Agência Brasil)

 新型コロナの感染再燃が加速化し、専門家が「今後2週間は戦争」「最も悲しい3月となる」と表現する事態に直面している。
 全国保健局長審議会(Conass)が1日、全国一律の夜間外出禁止措置をとる事と、集中治療室(UTI)の占有率が85%を超えたら即座にロックダウンを宣言する事を求めた。だが、連邦政府は各州には十分な金を回したとし、国としての対策強化の意思はない事を暗示。知事達の反発を招いていると1、2日付現地紙、サイトが報じた。
 ブラジルの1日現在の感染者は累計1058万7001人で、直近7日間の新規感染者数が5万5977人/日に上昇した。死者は累計25万5720人で、7日間の死者数は6日連続で最悪記録の更新となる1225人/日となった。
 オズワルド・クルス財団(Fiocruz)によると、UTI占有率が80%超の州は先週の12から18に増え、医療崩壊の危機は全国に拡大している。
 昨年は全国的な医療崩壊の状態は起きなかった。だが、今年は変異株出現で全国が医療崩壊の危機に直面している。1日には、マナウス型変異株の感染力は従来型の倍以上で、既に感染した事で得た抗体では再感染を防ぎきれないという研究結果も公表された。
 サンパウロ州の場合、30~50代でリスク要因を持たない患者が増え、1週間の感染者は9・7%増を記録。UTIと一般病室を合わせた入院患者は18・3%増、UTI占有率は5・3%上昇し、73・2%となった。

昨年4月、医療崩壊・葬儀崩壊したマナウス市の様子。現在はこの時よりも悪化している(Foto: Alex Pazuello/Semcom)

 診察時に重症化している例も増え、UTIでの入院期間は従来の7~10日が14~17日に伸びている。同州は臨時病院復活や監査の強化、より厳しい規制導入を進めている。
 60歳未満でリスク要因がない感染者の増加や長期入院は全国的な傾向で、UTIを増設したくても医療従事者が不足している州もある。
 リオ・グランデ・ド・スル州では、UTIが満杯で入院待ちの間に亡くなる人が続出、遺体を冷凍車に保管といった状態も生じている。
 Conassはこのような状況を受け、20時~翌朝6時を全国一律で夜間外出禁止とする事と、UTI占有率が85%を超えた場合のロックダウン宣言を要請。最悪の状態なのに、国全体が一致して感染抑制に動いていない事を批判した。
 他方、ボルソナロ大統領は各州に8374億レアルを回したとし、「感染拡大を防げないのは州や市の責任」という態度をとった事で、政府寄りとされてきたゴイアス州知事も含む18人の知事が1日に共同声明を発表。「パンデミックがかつてない程の猛威を振るい、経済や社会生活を破壊しているのに、連邦政府は対立を創り出し、国民の最大かつ本質的な関心事である、国を挙げた協力体制を弱体化させる事を優先しているようだ」との言葉で現政権の姿勢を批判した。
 保健省も相変わらず批判の対象で、迅速な予防接種実施に必要な注射器や針を供給していないとして、コロナ対策費の支払いを求めて最高裁に訴える州も出ている。