《記者コラム》違いを超え、互いの命を守るべき時

医療崩壊回避のために他地域に移送されるコロナ感染症患者(Marco Santos/Ag.Pará)

医療崩壊回避のために他地域に移送されるコロナ感染症患者(Marco Santos/Ag.Pará)

 暗いニュースは書きたくないし、読みたくない。だが、実態を知らなくては戦えない。最悪の状況だからこそ、何が起きているかを知らなければならないと思う。
 米国大統領選最終日、マスクも着けないトランプ氏をマスク不着用で迎えた熱狂的な支援者を見て、感染者や死者が増えると考えた。案の定、米国では大統領選後、感染者や死者が急増した。
 伯国の第2波は選挙戦や年末年始、変異株出現とカーニバルで悪化の一途だ。もしも社会的距離を保ち、感染抑制を図っていたら、変異株出現の可能性や感染者も減っていたはずだった。
 2月には米国の死者の4割は防げたとの記事も出たが、ブラジルでも皆が一致し、正しい対策に従っていれば、感染者や死者の増加は防げたはずだ。
 意見や見解の違いは当然だし、違いがなくなれば文化や思想の豊かさも失われる。だが、同じ目標に向かえば互いの距離は縮まる。三角形の底辺は離れているが、頂点を目指せば互いの距離が縮まるのと同じだ。
 大統領は地方政府に責任を擦り付け、知事達は現政権を批判して対立が深まるばかり。3密を避けるよう勧めた医師がフェスタに行こうとした人から暴行を受けるという事件も起きた。「感染防止で挙国一致」が実現していたら、とうの昔に乗り越えているべき事態だった。
 サンパウロ市では、最初の接種を受けようとして会場に出向いた80代の人が、2度目の接種が12~13週先になるオックスフォード・ワクチンだと知り、接種間隔が2~3週間のコロナバックが来るのを待つか、コロナバックのある会場を探そうとして帰っていく姿も見られるなど、早く2度の接種を終わらせたいと願う人が増えている。
 米国では接種迅速化のため、製薬会社がライバル社のワクチン製造に合意したし、接種が済んだ高齢者用の観光旅行パックも出始めた。
 各自治体が規制強化などを続けている今こそ、ブラジルでも政財界から国民までが協力し、互いの命を守るべきだ。 (み)