《ブラジル》大統領「怖がらず外へでろ、泣き言やめろ」=死者最悪記録を連日更新する最中=「大量虐殺犯」などの批判殺到

4日のボルソナロ大統領(Twitter)

 ボルソナロ大統領は4日、コロナ禍による死者などがこのところ記録を連日更新する中、「怖がらずに外に出ろ」「いつまで泣き言を言い続けるつもりだ」と言い放った。死者が26万人を超え、保健省の対策の甘さが批判されているのに、大統領自らマスクなしで群れを作るといった行動を煽っている中での発言は大きな波紋を投げかけている。5日付紙が現地報じている。
 大統領のこの問題発言に対し、ロドリゴ・マイア前下院議長はツイッターに、「いつまで泣いているつもりだ」という言葉を引用後、「人々の顔に笑顔が戻るのは、あなた(ボルソナロ氏)が大統領を辞めるときだ」との皮肉を書き込んだ。
 大統領の問題発言は4日にゴイアス州で行われたイベントでのものだ。ブラジルではコロナ禍がより深刻化し、多くの州や市がロックダウンなどのより厳しい規制を取り入れている中、ボルソナロ氏は、コロナ禍でも外に出て働き続けた農業生産者らを褒め称えた後、「家になどいるな。胸を開いて問題と立ち向かうんだ」と叱咤激励。「いつまで感傷的な気分に浸っているんだ。いつまで泣いているつもりだ」と言い放った。
 大統領はこのイベントの前にも、「予防接種ワクチンを買えとせがみ続けるバカな奴ら(Idiota)がいる」などと語っている。
 2018年大統領選で次点だったフェルナンド・ハダジ氏(労働者党・PT)は、大統領を「シリアル・キラー(連続殺人犯)」と罵り、同3位のシロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)も、かねてから呼びかけている大統領罷免を改めて主張した。
 諸外国でもイギリスのBBC局が、「国がコロナで過去最大の苦難の最中にまたもコロナを軽視」と報じた他、ロイターが「死者が世界第2位なのに、ワクチン接種が国民の3・5%にしか及んでいない」、ドイツのドイッチェ・ビレ紙も「1週間の平均の死者が1300人/日を超えた後」での発言と説明し、ボルソナロ氏の言葉を批判的に報じた。

 グローボ紙のコラムニストのジェルソン・カマロッティ氏は、今回のボルソナロ氏の発言に関して、「国を2分するような過激な発言は、自身の支持者を来年の大統領選へと惹きつけることと、ブラジリアの豪邸購入スキャンダルで揺れる長男フラヴィオ氏への世間の目をそらさせることが目的なのでは」と分析している。
 今回の発言は国内でも強い批判を招いている。最高裁のルイス・ロベルト・バローゾ判事は4日、3日にブラジルが1日の死者で1910人(保健省の統計)の新記録を作ったことに触れ、「多くの人の死は防げたはずなのに」と語り、国際的な死者数は減少に転じている中、ブラジルだけがネガティブな記録を更新し続けていることを嘆いた。また、「ブラジルでは人の命が単なる数字で扱われ、命の価値が失われている。人々はまさに、見捨てられた気分になっている」とも語った。
 コロナ禍でのボルソナロ氏のこうした発言は昨年から国際的に問題になっている。これまでの問題発言には、コロナ感染症は「単なる風邪」や、中国の死者を超えた時の「それがどうした?人生は続く」、「自分の名前はメシア(救世主)だが、私は奇跡は起こせない」などがあり、死者が1万人に達した昨年の5月にはジェットスキーに興じる姿も見せていた。