東西南北

 サンパウロ州でもコロナ禍による医療崩壊が進んでおり、それに伴う悲劇的な家族の話が報道されはじめている。大サンパウロ市圏タボアン・ダ・セーラでは16日朝、救急診療所の前で泣き崩れる32歳の女性の姿が見られた。彼女の母親(63)は10日に診察を受けた時点で人工呼吸器を装着され、集中治療室行きを待っていた。12日には裁判所の入院命令も得たが、16日になって、同日午後ならサンパウロ市クリニカス病院に入院できると知らされたという。彼女の父親も14日から緊急診療所で入院中で、「自分の無力が情けなくなった」と彼女は語る。また、15日にサンパウロ市内の病院の集中治療室に入院した30歳の女性はその前日に夫を亡くした上、母や叔父も亡くしている。彼女には幼い子が2人いる。サンパウロ州では16日までに88人が、集中治療室の空きを待つ間に亡くなっている。
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 コロナ禍の現在、サンパウロ市のサバラー小児病院によると、同病院で現在問題となっているのはコロナよりもむしろ急性気管支炎だという。1月の同病での入院患者は11人だったが、2月には39人になった。気管支炎は2歳までの子供に顕著な病気だ。それでも、同病による入院患者は昨年と比べ、1月で33%、2月で40%少なく、19年並みだという。同病院のダニエル・ジャロフスキー医師によると「コロナの感染は子供の間でも増えてはいるが、重症化は極めて稀」と語っている。
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 15日からの「紫レベル」実施で、かねてから需要が高まっていた出前の配達人(モトボーイ)の必要度がさらに増しているという。サンパウロ市内のモトボーイは5〜6万人と言われているが、この期間中に8万人まで増える見込みだ。生活が厳しくなる中、貴重な働き口にもなっているが、感染リスクの中、強盗被害に遭う危険度も増しているのに働き続ける彼らには、市民たちも感謝している。