【特別企画】新来シリア移民が見たサンパウロ=日本人と何が違って何が同じ?《3》=料理の記事にも政府許可が必要

時間はゆっくりのシリア人主催のブラジル人のパーティー

時間はゆっくりのシリア人主催のブラジル人のパーティー

友人との待ち合わせ時間

 シリアでは約束時間は守るべきとされていますが、何か問題が起きて5時間遅れたり、明日に先延ばしすることも普通にあります。ブラジルと比べれば相手に失礼なので遅刻は好ましくありません。
 ブラジルではたいてい15分くらいの遅れは許され、パーティーや気軽な集まりでは1時間でも2時間でも遅れてよいことを分かっています。シリアも似ています。ごく少数の人々だけが定刻を守り、あとはのんびりとしています。ブラジル人の時間感覚はシリア人にとってストレスではありません。

シリアでの食事時間

 人にもよりますが、早寝早起きは一般的ではありません。朝はゆっくり、夜は遅くまで。なぜなら日中が暑いからです。昼食後からようやくエンジンがかかるという感じです。朝食は10~11時頃、昼食は14時~17時頃、夕食は夜の22時~23時頃。

時刻と気温と空気汚染の表示板があるサンパウロの大通り

時刻と気温と空気汚染の表示板があるサンパウロの大通り

仕事の約束時間

 日本人ほど定刻通りにこだわりませんが、約束した日時に仕事ができていないことは好きになれません。教師(モハマド)や講演(アブドゥル)の仕事では、11時開始の仕事が12時に始まることは許されません。ブラジルでもシリアでもペドレイロ(改装業者)はよく仕事に遅れます。約束しても時間が分からなかったり来てくれなかったりします。1カ月で終わるといった作業が実際には5カ月かかったりします。
 罰金付きの契約をしたこともありましたが、まったく意味がなく、もし裁判にかけたいなら自由にどうぞと言われました。できなかったらできなかっただけの事です。日本ではペドレイロの仕事も約束が守られるのですね。ぜひ、時間通りに仕事をする文化を教えてほしいです。

購入した商品やサービスに問題があった場合

 ブラジルではクレームしても謝罪も代替の商品もほとんど届きません。シリアでは企業の人との人間関係によって全てサービスが変わってきます。企業や政府の関係者と顔見知りであれば、もし商品やサービスに問題があっても、その友人に言えば問題が解決します。もし知人がいなければ、諦めるしかありません。

政治に近い人間関係があるほど有利

 例えば、シリアでは何か役所から書類を発行してもらう必要がある場合、手数料とは別の金額が必要になります。ブラジルではあなたのCPFや労働手帳、パスポートを取得するだけで決まった額以上のお金を払う必要はありますか? ないですよね。
 シリアでは人間関係が重要で、便宜を図ってもらえる知人にすべてを任せるか、お金を払うしかありません。いわゆる賄賂です。どんな些細な事でもです。シリアで戦争や様々な問題が起こっているのも、その様なことが発端です。良くいえば融通が効いて交渉の余地があるといえ、ブラジルは官僚的だと思う時もあります。ブラジルも賄賂はありますが、もっと大きな世界の話が多いですね。
 シリアでは外国人の権利もすべて人間関係に左右されます。人間関係が広くて政府に知人がいれば、物事はよりスムーズに運びます。もし誰も知らなければ、権利はないに等しいです。
 他にも、ジャーナリズムでの例を挙げます。ジャーナリストがフェイジョアーダの記事を書くとします。シリアでは記事を出すためには政府の許可が必要です。「ファイジョアーダがおいしい」と書くだけでもです。政治に近い人との人間関係があればあるほど物事はスムーズになります。(つづく、大浦智子寄稿)