「単なる風邪」の猛威に目覚める?

予防接種を擁護する発言を行う大統領(23日、Isac Nobrega/PR)

予防接種を擁護する発言を行う大統領(23日、Isac Nobrega/PR)

 23、24の両日、ボルソナロ大統領が「年末までに5億回分のワクチン確保」「国民全員の接種可能」などと語った。24日の発言は、三権の長や検察長官、保健相や知事達も交えた会議の後に行われた。
 24日は「単なる風邪(gripezinho)発言」からちょうど1年となる。昨年3月24日のコロナの死者数は12人(累計46人)だったが、この23日の死者数は世界でも類のない3251人という新記録。24日には死者累計が30万人突破という現実に、さしもの大統領も目覚めたと思いたい。
 だが、23日の発言には「これまでも予防接種を支持して来た」との嘘も混じり、メディアの反応は冷ややかだったし、パネラッソ(鍋叩きによる抗議行動)も起きた。
 これらは皆、明確な対策を採るのを怠った大統領への拒否反応だ。大統領は、トランプ米元大統領らに従って「単なる風邪」「クロロキンは有効」などの科学的な根拠もない発言や、「経済を守れ」との号令のみを繰り返してきたからだ。
 新型コロナの感染拡大を抑制策として厳しい規制を採用した州知事らへの批判も1年間繰り返されており、23日は、知事達によるロックダウンや夜間外出禁止措置採用は違憲との申し立てで敗訴した。大急ぎの保健相就任も、国民を安堵させるには至っていない。
 18年の統一選での「再選は考えていない」との言葉を翻し、来年の大統領選に焦点を合わせて政敵叩きに終始する姿や、国民の命よりイメージアップが大切としか思えない言動などは、かつての支援者やリーダーを敵に回す事態も招いた。だが、本人はまだ「攻撃は最大の防御」と言わんばかりの行動を繰り返していた。
 そういう意味で、24日の会議を機に、有効なコロナ対策が採られるようになると信じたい。明確な根拠と過ちを認める勇気、国民と痛みを共有する姿勢をもって新型コロナに対峙しなければ、犠牲者が増し、国民の支持をさらに失う事になるだろう。(み)