特別寄稿=ボケ予防手段としての金融投資=じっくり楽しもうマネーゲーム=不安定化する政治/経済局面=聖市在住 元週刊 FAXニュース代表 永井 忍=(3)

一筋縄ではいかない、難しい経済の舵取りをするゲデス経済相(Marcos Corrêa/PR)

 さてブラジルは今、部分的な内閣改造があったばかりの政治面では依然として要注意、経済金融面では政治リスク悪化の波紋と最高更新のコロナウィルス感染によって、経済観測悪化が続いて一段と悲観的そして不安定になっている。
 政治面で要注意なのは、部分的な内閣改造が現政権の国会運営の支えであるセントロン(中道連合)との関係強化に沿ったものであっても、どれほど関係改善できるか決して楽観を許さないからだ。
特に大幅遅れで成立した2021年国家予算案は、政府(政府目的優先の大統領)と利権優先のセントロンが主導する国会が、いかに財政的課題に真剣に取り組む姿勢を持たないか明らかにして問題を残すものだった。
 加えて、ルーラ元大統領の有罪裁決無効が2022年大統領選繰上げ(政局不安定化)の可能性を開いた。
 経済金融の不安定さは今、特に国内リスクに起源を持つ。最大の問題はワクチン接種が遅速で悪化するコロナウィルス感染だ。保健相交代後に1日当り死亡者数最高と医療体制崩壊州の増加など、感染対策は改善を示しておらず、解決にもっと多く手間取りそうだ。
 加えて財政面での問題は、経済相辞任に追い込むほどではないが、その危惧を継続し、上記のような困難と観測悪化を回避できずにいる。

(1)国内の主要なリスク
 リスクの上で前月に比較して、新たに2022年大統領選繰上げの可能性と軍内での不満拡大によって殊に政治リスクが悪化した。経済相続投ではあっても辞任の種は残っており、緊急支援策の財政的裏付けに加えて2021年国家予算案の内容が疑問と注意を集めている。
 ルーラ元大統領の有罪裁決は、訴訟過程に違反があったため無効との最高裁仮判決が下された。元大統領が二審裁決後に失っていた政治権を回復し、2022年大統領選に出馬できることになった。来年大統領選の行方を根底から変えた。それが行政や国会、社会運動にどのように影響し、金融市場に波及するか新たな不確実性要素だ。
 険悪化するパンデミックを前に経済観測が悪化の一途、ボルソナロ大統領とその政権に対する批評や不満は確実に強まっているが、なお政権打倒に至る反対勢力の結集にはなっていない。
 「ワクチン接種で下半期に堅実な経済再開」と楽観的な中銀だが、その最新の展望で指摘したように、上半期に景気回復の鈍化、インフレの上方修正など観測悪化が継続している。経済界と金融市場に悲観をさらに高めかねない雲行きだ。
 インフレの加速と観測の上方修正は、中銀による市場観測を上回る形での利上げとなった。険悪化するパンデミックとともに景気見通しを悪化し、それがさらに進みそうだ。

(2)国外の主要なリスク
 リスクの上で、前月に対して明らか、目立つ変化は現れなかったが、ワクチン接種拡大に牽引された米国経済の回復など、やや改善と言えよう。
 米FRBが今年の米国経済についてGDPとインフレの予測を上方修正して景気回復を認めたが、2%以下のインフレ継続を踏まえて2023年まで金利据置きを示唆した。それでも労働市場の回復ぶりが強まるほど、利上げ繰り上げが噂されて不安を喚起する。
 ワクチン接種拡大が進む米国などの国々でコロナウィルス感染が抑えられて、景気回復の観測を後押しするが、依然としてサプライチェーンが阻害されて、自動車産業を代表的に世界中で生産一時停止の事態が発生している。
 それに加えてスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、運航をほぼ1週間停止して、世界貿易に甚大な困難を引き起こし、新たな課題を突き付けた。
 米国でバイデン政権が発足して、トランプ前政権からの路線変更を次々と打ち出した。その波紋が広がっており、経済や金融への波及が徐々に形を取り出して、慎重な姿勢をなお崩せないことを示している。

(3)2021年マクロ経済の観測(4月1日付Focus)
 GDPの3・17%と鉱工業生産の5・29%成長、IPCA(インフレ)の4・81%、年末にドル相場R$5・35とSelic金利5・0%。
 前回(3月5日付)にGDPの3・26%と鉱工業生産の4・37%成長、IPCA(インフレ)の3・98%、年末にドル相場R$5・15と4・0%のSelic金利。
 それと比較して、鉱工業生産を例外に、特にインフレと金利で明らかな観測悪化を示す。
 不安定なドル相場と価値安のレアルは、特に食品値上りでインフレを押し上げてきた。平均的観測(4・81%)が目標中心(3・75%)以上、その上限(5・25%)に近づいた。利上げを繰り上げて、さらに強めた。
 中銀が2015年以降初めて利上げ、一挙に0・75ポイント、Selicを2・75%に引き上げた。ただし観測以上の利上げ幅について、中銀が新たな波となっているコロナ禍で利上げのリスク(副作用)を十分に考慮していないことを示すと一部が批評した。

(4)利上げ開始後も投資は株式か
 政治リスク悪化は危惧材料だが、インフレ加速を前に実質マイナス金利が続くため、株式シフトの投資構成をなお継続できよう。
 株価(Ibovespa)が3月に25日からの伸びで大きく、6・0%上昇(116,634点)に終わったが、第1四半期に2%下落だった。ただし3月の平均値では2月に続く下落だった。
 例えばItaú BBAは年末(Selic:5.5%、GDP:3.8%、インフレ:4.7%、ドル:R$ 5.30)に135千点を見込んでいるが、公共財政と景気(GDP)への波及で株価に最も重要な変数としてコロナ禍を見る。
 大方は特に外国投資家だが、昨年末より悪化した様々な国内の、特に財政面のリスクを踏まえて、今年に大きな上昇を見込みにくいとの悲観を強めている。

(5)ドル相場はどうなるか、外貨建て資産は良い投資対象か
 政治リスク悪化は外貨建て資産への運用をこれまでよりもやや強く後押しする。
 ドルが3月31日にR$5・6286、3月に0・5%そして第1四半期に8・5%の上昇という結果だった。政治リスク悪化と財政的懸念が主因と市場は見る。
 攻撃的な中銀は、その介入を通じてR$6・00にドル高騰を困難化しているが、それでもレアルは押され続けると市場の一部が見ている。今や誰も今年にR$5・00以下のシナリオを見るものはなくなった。
 他方、中国経済の回復による国際商品相場の改善は、貿易収支と外貨獲得に、結果としてドル相場に良い展望を開く。さらに実利マイナスの国内で利上げ開始は以前なら、外国投資家の国内確定利資産(主に国債)への運用増加(ドル安)に導くはずだ。
 サンパウロ証券取引所(B3)取引での外国投資収支は外国投資家の引き揚げで、2月に続いて3月にも赤字だった。他方、他の金融取引を含む中銀の外国為替収支は1月と2月に黒字だったが、3月についに赤字に転じた。
     ☆
 なお私の金融投資の残高は3月に平均株価指数に遠く及ばなかったが、それでも連続の減少を中断して増加を記録した。外貨建て資産も助けたが、株式投資ファンドに傾斜した配分であれば当然の結果だ。今の構成を特に変える意向はない。実質マイナスがなお続く確定利の今、なお辛抱して好機、株価上昇を待つ構えを今は保持する。