【特別企画】新来シリア移民が見たサンパウロ=日本人と何が違って何が同じ?《8》

オーリョ・グレーゴ(ナザールボンジュ)

オーリョ・グレーゴ(ナザールボンジュ)

笑い

 ブラジルもシリアも笑顔の習慣は似ています。人に会えば笑顔で応対するのを好みますし、それは大切なことです。ムスッとしているのは好まれません。ただ、ブラジル人の方がもっと笑顔を見せます。
 アラブ世界は広く、ブラジルでアマゾンの奥地に行けば文化の異なる人々が暮らしているように、地域によっては全く文化が異なる場所があります。
 だから、ある日本の本に紹介されていたというように、他人の乳児や幼児に笑いかけてはマナーに反する地域もあるとは思いますが、少なくてもアレッポやダマスカスではその様なことはありません。
 ただ、ブラジルの様に生まれた当日や翌日に家族以外が友人知人の赤ちゃんを見にいくということはありません。
 基本的にアラブでは何か素晴らしいものを見たら、神を称えるようなことを言わなければなりません。赤ちゃんを見て「かわいいですね」とだけ言って、「神のお恵みがありますように」と言わなければ、人々は怖いと感じます。
 「かわいいですね」の言葉だけでは、その人が赤ちゃんに妬みなどを持っていて、悪いことが起こるかもしれないと考えます。だから、我々はオーリョ・グレーゴ(ナジュールボンジュ)をお守りとして赤ちゃんの身に付けることもあります。

脱毛

 シリアでは男性は脱毛をしてはいけません。同性愛者と思われます。
 アラブの女性は定期的に全身を脱毛します。ブラジルの女性は腕の毛に関しては、脱毛ではなく、脱色する人が多い印象を受けます。アラブでは体毛を脱色や染色をすることはありません。アラブの女性は一本の毛でも残っていたら気になり、汚いと感じます。脱毛法はブラジリアンワックスと似たものです。

サンパウロ市のIPTUのサイト

サンパウロ市のIPTUのサイト

税金

 シリアでは誰も額面通りの税金を払いません。それに代わるものが賄賂です。例えば、一年間に住宅税を5千レアル払わなければならないとします。その場合、税務署の関係者と交渉して500レアルを支払えば手続きは完了します。

道路

 道路はシリアよりブラジルの方がとても良いです。しかし、エジプトと比べたらシリアの方が楽園です。ぜひ、エジプトで自転車に乗ってみてください。
 中東はどこも似ており、賄賂によって特定の個人が潤い、そのお金はスイスに行き、子弟は海外で勉強します。多くのアラブ諸国は、石油やガスで儲けたお金をすべて政府が独占して蓄えています。
 アラブの湾岸諸国はその富を町に投資して、ドバイやサウジはとてもきれいです。日本の道路はどうしてきれいなのですか? 道路がきれいに整備されているということは、政府が公共投資を行い、国の富を市民に還元しているかのバロメーターですよね。

アレッポの大通り

アレッポの大通り

 ブラジルはいつも政治家の汚職がニュースになりますが、シリアと比べることはできません。シリアの人口は約2300万人、ブラジルは大サンパウロ圏だけで約1500万人。サンパウロにはブラジルの大半の富が集中しています。
 ここでは政治家が汚職をしてもお金が無くなるわけではなく、残りのお金でサンパウロの公共サービスが行われています。シリアの公共サービスは良くありませんでした。
 戦争は何もかも取り換えます。人々の人生も。アラブ諸国はかつてオスマントルコに支配されていましたが、第一次世界大戦でオスマントルコ帝国が負け、各国に分断されました。

サンパウロの大通り

サンパウロの大通り

 アラブ諸国が一つになれば、世界でもっと強くなります。石油の採れる土地があり、植物のよく育つ土地があり、豊かな資源に恵まれています。
 アラブが一つになれば素晴らしい国になりますが、欧米はそれを望んでいません。昔はシリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダンの区切りはなく、一つでした。それらの地域を分けることによって、操りやすくしたのです。(つづく、大浦智子さん寄稿)