《記者コラム》人を救うべき医師が4才児を虐待死=妻は平然と美容院へ

事情聴取を終えて警察署を出るDr.ジャイリーニョ市議(Tania Rego/Agencia Brasil)

事情聴取を終えて警察署を出るDr.ジャイリーニョ市議(Tania Rego/Agencia Brasil)

 3月8日に起きた4歳のエンリ君虐待死事件。発生直後から事故死ではないと疑われていたが、捜査が進む都度、衝撃が広がっている。母親の依頼で乳母や祖母が虚偽の供述を行った事、母親やその恋人である市議が事件前後に平然と旅行し、美容院に行った事なども驚きに値する。
 コラム子にとっては、虐待を加えて殺した市議が医師である事や、息子への虐待を知っても止めさせず、事件後も市議と共に事実隠匿を図った母親が教師だった事も衝撃が大きかった。
 今回の事件で、08年3月29日に起きた、5歳のイザベラちゃん殺害事件を思い出した人もいるだろう。継母に首を絞められて窒息状態になった女児を父親がアパートの窓から落として殺し、他殺を装った事件だ。
 イザベラちゃんの実母は今回の事件後、エンリ君の父親を慰める傍ら、心無い人達が起こす幼児虐待への怒りや苦悩を表明している。
 エンリ君は事件前夜、実父との別れ際に、「もう1日、お父さんと一緒にいたい」と言ったという。離婚後も親子が会う時間を法的に保障するブラジル故に起きた会話だが、「虐待の事を知っていたらあの子を帰らせなかったのに」とほぞをかんだであろう父親の心中を思うと胸が痛む。
 「情熱的な人が多いのに、なぜ離婚が多いか」とコラム子の夫は首を傾げる。だが、「一時の感情で行動する人が多い」と考えれば、子供好きが多いのに幼児虐待・暴行死多発(4歳以下だけで10年間に最低2千件)との14日付エスタード紙の報道にも納得する。
 虐待で生じた心の傷で一生を狂わされる人も多いが、事件や事故で我が子を失った親や命を奪われた子供の事を思うと、一層、心が塞ぐ。
 命を守り、救うべき医師による虐待死、真実や生き様を伝えるべき教師による事実隠匿、市議の父親はミリシア(犯罪者の民兵組織)関係者という、信じがたい要因が重なる事件の捜査は続く。
 真実解明や裁きを求める声も出ているが、急ぐべきは子供達の心の声や虐待の事実を掴み、事件を未然に防ぐ事だ。星となった子供達は戻ってはこないのだから。(み)

★2008年5月3日イザベラちゃん事件起訴へ=警察は第三者の存在否定=父親、継母の身柄拘束請求も

★2010年3月24日《記者コラム》イザベラちゃん事件裁判という“公開刑罰”
★2010年12月28日《ブラジル》伯字紙選んだ4大事件=リオ、イザベラ、2女性失踪