《ブラジル》大統領が伐採ゼロや温室ガス削減を宣言=気候サミットで発言一転=「実態と真反対」批判の声も=PT政権の手柄を横取り?

22日のボルソナロ大統領(Fabio Rodriguez Pozzebom)

 22日、米国のバイデン大統領主導で気候変動サミットが行われた。ブラジルからはボルソナロ大統領とリカルド・サレス環境相が参加し、「2030年までに違法伐採ゼロ」「温室効果ガスの削減」などの宣言を行った。これまでの態度から一転した宣言だったが、国内では内容や実現の可否を疑問視する声も多かった。22日付現地サイトが報じている。
 22日から始まった気候変動サミットは、ネットによるヴァーチャル形式で行われ、40カ国の首脳が参加した。
 会議はバイデン大統領の演説で幕を開け、ボルソナロ大統領が演説を行ったのは、その約3時間後のブラジリア時間の午前11時頃だった。ボルソナロ氏は、2019年9月に、法定アマゾンの主権はブラジルにある」と宣言して森林伐採増加を批判する諸国を強くけん制した時の態度を一転させ、環境問題につとめることを宣言した。
 ボルソナロ氏は国際的に問題となっている森林伐採に関して、「森林保護法を徹底適用して、2030年までに違法伐採を撲滅する」と約束。それによって「同年までに温室効果ガスの排出量を約50%削減できる」との見解を表明した。
 温室効果ガスの排出削減目標については別途、「2025年までに37%、2030年までなら40%削減させる」と宣言した。ボルソナロ氏は、この水準で温室効果ガスの排出量を減らせば、ブラジルは2050年までに気候的に中立化させることが可能としている。この目標は、以前は2060年に定められていたものだ。
 一連の発言は、これまでの大統領の環境問題に対する態度と真反対のもので、国際社会の好感を買いたいとの意向が丸見えになった。

 ボルソナロ氏は、環境対策は複雑で、目標達成のためには財政面も含めた障害が多く、協力できる国や企業、団体、個人の支援を期待しているとも語った。宣言の中では、「予算などに限りがある中、環境管理機関への資金を倍増することなどを決めた」とも語った。だが実際には、会議の直前にも、サレス環境相が、環境監視機関の懲罰適用権を制限する行動をとり、監視活動に足かせをはめている。
 また、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)などの活動資金が枯渇し、監視活動などが十分に行われていないことは、国内の活動家たちが問題視し続けており、今回の宣言の内容が粉飾されたものであることは明らかと見る人も多い。このため、国内では、これらの宣言を疑問視する発言が相次いでいる。
 一例はジャーナリストのミリアン・レイトン氏で、「労働者党(PT)政権が残した環境問題での成果に自分が乗っかろうとしている」と批判。22日付エスタード紙サイトも「(自身が大統領をつとめた)過去の2年間をなかったことにし、それまでの政権の努力を自政権に結びつけようとしている」と批判した。
 さらにこの演説の直後、労働者党(PT)も声明を発表。PTはこの中で、「3月の法定アマゾンの森林伐採面積が前年同期比で216%増になっていたこと」「連邦政府の態度を疑問視され、ノルウェーとドイツから合計1億9千万レアルのアマゾン基金供出を差し止められたこと」「つい先日まで、地球温暖化の存在を否定していたエルネスト・アラウージョ氏が外相だった」と批判。宣言の内容も「中身のないもの」と切り捨てている。