《ブラジル》今年のコロナ死者が昨年1年分超える=感染共々増加ペースは鈍る=ワクチン開発費に拒否権?

週毎の感染者の推移(保健省公式サイト)

 24日、今年の新型コロナ感染症による死者の累計が19万5948人に達し、昨年中の死者総数の19万4949人を超えた。直近7日間の平均の感染者や死者は減少傾向が続いているが、保健省が5月に入手できる予防接種ワクチンの量が減ると発表。ボルソナロ大統領が国産ワクチン開発用の予算に拒否権行使など、感染拡大抑制への道のりは険しそうだ。
 25日現在の感染者は1434万787人で、感染率は6万8242人/100万人。死者は39万797人。死亡率は1860人/100万人。死者数を感染者数で割った致死率は2・725%となった。

週毎の死者の推移(保健省公式サイト)

 25日現在の4月の死者の累計は6万9282人。24日の時点で3月の6万6573人を超えており、月間記録を更新していた。
 だが、7日間の感染者は平均5万6817人/日、死者は同2495人/日で、12日の感染者7万2030人/日、死者3124人/日以降、22日と24日に微増した以外は減少傾向が続いている。
 感染学上の第16週(18~24日)の感染者40万8124人は、前週の7・4%減を超える10・3%減。死者1万7814人も、前週の3・8%減を大幅に超える12・4%減だ。
 感染者や死者の減少傾向は、2~3月に採用されたロックダウンも含む外出規制と予防接種が主な原因と言われる。感染者減で病床占有率が落ちれば、入院不能とか、入院しても薬不足とかで適切な治療が受けられずに死亡する人が減る。3月下旬~4月上旬は130万人(感染者の約10%)超の日もあった治療・観察中の患者も、25日には8・0%の110万821人となっている。

 ワクチンの優先接種グループでの感染者や死者の減少は様々な形で報告されている。25日付G1サイトによると、ミナス州とエスピリトサント州では先住民の間の感染者や死者が大幅に減少。ベロ・オリゾンテ大都市圏サンジョアキン・デ・ビカス部落では、接種開始前は半数がコロナに感染、死者も出たが、今は感染しても軽症で終わるという。ミナス州の先住民は88・72%が2回の接種を完了。1回のみの人も入れると95・35%が接種済みで、感染者ゼロの部落もある。
 アマゾナス州も新規感染者は371人で、21市で新たな入院ゼロの状態が続いているという。
 予防接種が速やかに進めば感染拡大抑制効果が増し、変異株発生の可能性も減る。だが、保健省は24日、国家衛生監督庁(Anvisa)の許可が出ないなどで、5月に入手予定のワクチンは3240万回分で、3月19日発表の4690万回分より31%減ると発表した。4月入手分も、3月19日発表の4730万回分より少ない2660万回分のみだが、3月31日修正時の4730万回分よりは増えた。
 安定したワクチン供給と接種加速のためには国産化が望ましいが、オズワルド・クルス財団によるオックスフォード・ワクチン国産化の時期は未定だ。
 ブタンタン研究所同様、3月に人での治験申請の意向を発表したサンパウロ総合大学リベイロン・プレット校の国産ワクチンは、ボルソナロ大統領が科学技術省計上分の研究開発費2億レアルに拒否権を行使したため、開発とん挫の可能性が出てきた。