東京都=国際共同供養墓が15日完成=国籍宗派問わず4万円納骨=「外国人も安心して死ねる社会に」

出席した参加者ら

出席した参加者ら

 【東京発=國分雪月記者】一般社団法人「日本海外協会」(東京所在、林隆春会長)が運営する国際共同供養墓「メモリアル・リスタート・コミュニティ」の建碑式が15日、東京都八王子市の多摩八王子霊苑内で行われた。国籍・宗教問わず納骨できる共同供養墓として、日本在住の外国人のために建設された。東京都議会議員の石毛しげる氏、一般社団法人ブラジリアン・ビジネスグループ・アジアージャパン(橋本秀吉代表理事)が支援している。建碑式には林会長、石毛都議、橋本理事、カトリック東京国際センターのホアン・マシア神父ほか関係者ら約40人が集まった。

 国際共同供養墓の建設は「リスタート・コミュニティ」のプロジェクトの一環。80年代から増加する日本定住外国人労働者の多くが高齢化や病気により日本で亡くなる時代になった。しかし、宗教や経済的な問題から日本の墓地では外国人を埋葬できず遺骨の処理問題が増加している。そうした問題を解決するため、林会長が個人で800万円を負担してこの共同墓建設を計画し、曹洞宗の徳雲寺(石川県)の住職でもある石毛都議が所有する多摩八王子霊苑の一角を提供した。
 式典では石毛都議の弟でもある石毛航雲住職(徳雲寺)が導士を務め法要を行った。林会長は挨拶で建設に至った経緯を「移民の高齢化や、日本永住を望む移民の増加により多文化・多民族社会に寄り添う介護、葬式や墓の需要が増えている。今後はさらに世界的に格差社会が広がり、移民や中間層が困窮する状態になるだろうが、安心して死ねる社会にしたい」と説明した。
 石毛都議は「日系の多くの方々が日本を助けてくれている。日本に住んでよかったと思ってほしい。今後行政も含めて日本各地にこのような墓を建てられるようにしたい」と期待した。ホアン神父も挨拶に立ち、カトリック式の祈りを捧げた。
 国際共同供養墓内にはデザイナーのつつみよしひこさんが設計した記念碑「ESTRELA」が建っている。納骨堂の正面には「Arigatou」と刻まれた石碑と献花台が設置され、丸い天窓から差し込む光が納骨堂内を明るくしている。
 国籍や宗教を問わず納骨が可能となっており、基本費用は4万円。経済的な問題がある場合は費用の個別相談も受けている。約200個の骨壺が納められるほか、地下に埋設スペースが確保されているため、数千人分の納骨が可能だ。
 問い合わせ、申し込みは日本海外協会(事務局05・2442・1703、info@nihon-kaigaikyoukai.com)へ。

 

人マチ点描=人が星に手をかざす光景=供養墓モニュメントの意味

国際共同供養墓の前に立つモニュメント(右手前)

国際共同供養墓の前に立つモニュメント(右手前)

 東京都八王子市の多摩八王子霊苑内に建てられた国際共同共用墓「メモリアル・リスタート・コミュニティ」には熊本県出身のデザイナー、つつみよしひこさんが設計した記念碑が建てられている。
 「話をいただいた瞬時にデザインと詩が浮かんだ」とつつみさんが語る記念碑は、黒い御影石に支えられた白く丸い石が特徴。黒い石柱は人を表しており、丸石はタイトルでもある星を表すという。
 人が星(丸石)石に手をかざす風景でこの作品が意味を結び完成するそう。柱の表面は光沢をおさえるように磨かれており、雨の日に表面が濡れた際、周囲の自然が反射して映る。晴れた日には力強く星を支えるように見える石柱は、丸石を眺めながら一周すると視覚的な錯覚により石柱と丸石のサイズの変化を感じるようになっている。
 「人も生きていればどんどん変わっていく。天気や四季、見る位置でも様子が変わるようにした」とのことだ。この記念碑のおかげで訪問するたびに新鮮さを感じられる風景になっている。(雪)

 

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