《チリ》制憲議会選で与党が大敗=ピノチェト憲法大改正に

 15〜16日にチリで、新憲法を選定するための制憲議会選が行われ、ピニェラ大統領の中道右派勢力が全体の3分の1の議席さえ占めることができず、左派に惨敗した。ピノチェト軍事政権から続く保守憲法は、いったん白紙に戻して刷新されることになる。また、同日に行われた市長選でもチリ共産党の注目候補が勝利。11月の大統領選の目玉となりそうだ。17日付現地紙が報じている。
 チリの新憲法制定は、2019年10月から数カ月続き、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を中止に追い込んだデモで、国民が求めていたものだ。
 これまでの憲法は、独裁者アウグスト・ピノチェト大統領の軍政末期の1990年に「置き土産」として作られたもので、同国における格差社会の元凶と見なす声が多かった。ピノチェト政権下での経済政策は、現在に至るまで、新自由主義経済のモデルとされていたものだ。
 制憲議会の議員を選出する選挙では、1373人の候補から155人を選出。投票率そのものは42・5%と高くはなかったが、このことは、憲法を改正しようとする国民の気持ちを損なうものではなかった。

 ピニェラ大統領の所属する中道右派連合「ヴァモス・ポル・チリ」はわずか20・56%の37議席しかとれなかった。議席数自体は1位だったが、以下は左派の政党連合や社会運動団体の「人民権威」(28議席)、「リスタ・デル・プエブロ」(26議席)、「リスタ・デル・アプエブロ」(25議席)、「新憲法のための独立派」(11議席)と圧倒。新憲法は、ピノチェト擁護派や新自由主義経済主義者の方針とは大きく変わることが決定的となった。
 制憲議会の内訳は、女性78人、男性77人で、うち17議席は先住民が占める。新憲法の草案は9カ月でまとめられた後、国民投票で是非を問うことになる。
 この日は同時に全国市長選も行われたが、首都サンチアゴでは、連合「人民権威」内のチリ共産党から出馬の30歳の女性候補、イラシー・アスレル氏が当選した。イラシー氏の母親はブラジル人のため、同氏の当選はブラジル国内でも話題となっている。
 また、サンチアゴ都市圏のレコレタ市では、11月に行われる大統領選の有力候補でチリ共産党のダニエル・ハドゥエ氏が再選。大統領選に向けて弾みをつけている。

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