《記者コラム》ブラジル大統領の思想の根底に「死の政策」?

現政権のコロナ対策について調査するCPI(18日、Edison rodorigues.Agencia Senado)

現政権のコロナ対策について調査するCPI(18日、Edison rodorigues.Agencia Senado)

 4月27日に発足した上院コロナ禍議会調査委員会(CPI)が、元保健相らを召喚し、現政権のコロナ対策などに関する証言を求める中、ボルソナロ大統領が「自然感染による集団免疫」という考えを捨てていなかった事を痛感した。
 英国のジョンソン首相は同じ考えを持っていたが、自分がコロナに感染して重症化し、感染拡大によって集団免疫を得るまでに死ぬ国民の数が膨大なものになる事に気づき、方針を変えている。
 だが、6日付フォーリャ紙の「死は政治的なもの」との記事や、3月18日付ブラジル・デ・ファト・サイトの「パンデミックの中で採用された『死の政策』はボルソナロ氏の古い提案と合致する」との記事から、ボルソナロ氏は政界入り当初から人口抑制が必要と考えていた事を知り、背筋が寒くなった。
 ボルソナロ氏は2002年に自分が提出した憲法補足法案を弁護するために2010年に行った演説で、「飢餓や貧困、暴力の原因の一つは過剰な人口増加」「海岸には横たわる場所さえない」と述べたという。
 こんな考えを持っている人なら、パンデミックは人口を抑制し、生き残る力のない人を振るい落とすための絶好のチャンスだ。
 影の委員会を作り、保健相達の進言や要請を拒み、無視してきたのも全て「死の政策」の一環なら、ワクチン接種やマスク着用、社会隔離に反対し、薬効が証明されていない薬品を推奨した事なども説明がつく。
 先の演説で彼は、「これ以上人口が増えないよう、貧乏人は公的医療機関で不妊手術を受けられるようにすべき」「残念だが、大半は国の将来のために役立たないのだから」と語ったという。
 信心深さを尊ぶ発言をよくするボルソナロ氏は、頻繁に「神」という言葉を使う。だが、聖書によれば、神は人類を愛し、罪から救うために、自らの子であるキリストを身代わりとして十字架に着けた。人の命をないがしろにするような政策を、神が喜ぶはずはない。
 44万人を失った後ではあるが、宗教的な悔い改めと、政治的な方向転換を望みたい。(み)

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