《ブラジル》印刷付投票法案が選挙高裁や政党反対で難航=大統領は根拠なく不正強調も

バローゾ判事(Marcelo Casal)

 ボルソナロ大統領が「これまでの投票方法では不正が起こる」と主張し、「導入しなければ選挙はしない」とまで言い張って導入を要求している印刷付投票(ヴォト・インプレッソ)が、選挙高裁や政党の強い反対にあい、進展が止まっている。8日付現地紙が報じている。
 ボルソナロ大統領は、米国大統領選でドナルド・トランプ氏が「不正選挙があった」と連日のように抗議を行って以来、「わが国も選挙法を変えたい」と投票方法の改正を求めていた。
 当初は「電子投票以前の紙による投票への回帰」と解釈され、強い反対にあったが、次第に「電子投票をした時に印刷した書面で投票内容を確認して会場の箱に入れ、再集計が必要になった際に印刷したものを活用する」というものという周知が進み、下院でも前向きに審議される方向に進んでいた。
 だが、最高裁判事で選挙高裁長官のルイス・ロベルト・バローゾ判事が、「時代に逆行」「憲法違反」「来年の導入は技術的に不可能」と否定し、「電子式での過去の投票での不正を述べてみよ」と大統領に返答を求めていた。

 それに対してボルソナロ氏は、「18年に自分は一次投票で大統領選に勝つはずだった」「2014年の大統領選はアエシオ・ネーヴェス氏が勝つはずだった」と証拠をあげずに述べるにとどまった。
 こうした大統領に対し、6月26日に11の政党の党首が集まって、ヴォト・インプレッソに反対し、従来の選挙法を支持する声明を出した。その中には進歩党(PP)や民主党(DEM)など、大統領に協力的な党も含まれている。
 大統領はその後も、「新方法を導入しなければ選挙はさせない」「18年の選挙の不正をハッカーたちと証明してみせる」などと語り、7日には「個人的な嗜好で自分を攻撃している」とバローゾ判事を批判した。
 だが7日、14年の大統領選でアエシオ氏の副候補を務めたアロイージオ・ヌーネス氏が、「選挙に不正はなかった」と発言。8日には改正法案の報告官のフィリペ・バロス下議が、同法案の投票延期を申し出るなど、新投票法案は難航している。