ニッケイ歌壇前選者の上妻さん=歌集『うづ潮』第3集を発刊

『うづ潮』第3集表紙

『うづ潮』第3集表紙

 今年5月までニッケイ歌壇の選者を務めていた上妻博彦さんと、故・泰子夫人の短歌を纏めた歌集『うづ潮』(水鶏会)第三集が今年5月に発刊された。全148頁。
 同著には2008年から今年までの間に、博彦さんが歌誌『椰子樹』や日本の『水鶏(くいな)会』、明治神宮献詠大会などで発表した436首、泰子さんが亡くなった2017年までの作品251首を収録した。ブラジルから送られた草稿を日本にいる実弟茂香さんが編集や製本した。
 コロナ禍になってから作った歌『コロナ禍の自粛と緩和の鬩ぎ合い使ひたき銭かせぎたき金』などの今の世相を映した作品も収められた。
 博彦さんが第10回海外日系文芸祭で「角川『短歌』編集部賞」を受賞し、NHK短歌番組でも女優マルシアさんが紹介した『移民らのもたらしし柿この国の秋は五月と違わず熟す』などの作品も収録されている。
 編集は泰子さんが亡くなった翌年に始まった。亡き妻の部屋に残るメモの山から集めた作品や、歌を作るためのアイデアとして書いたものを博彦さんが整理して完成させた一首『年古りて遠くなりたる故里に波が消しゆく二人の足あと』という歌も収録した。夫婦の歩みの最晩年をまとめた思いれ深い歌集になっている。
 同編集・製本に携わった茂香さんによると「全部手作り。パソコンとプリンター、糊と鋏とカッターナイフ、ホチキスを駆使して仕上げる。手作業だから時間がかかる」という。
 その中で160冊を製本。ブラジルには50冊送った。親戚、知人や希望者に配布している。編集部にも配布用に2冊あるので、取りに来た希望者に先着で配布する。