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安慶名栄子著『篤成』(40)

 クリチーバでは、父は本当に物知りだという事を思い知らされました。その歴史を探るために町巡りをしたかったからです。パラナグァーの電車に乗った時に父は、その線路の開通式の初運行には、安全確認のためエンジニアが一人で運行したという事まで知っていました。
 様々なところへの旅は、父を喜ばせようとして始まったのですが、どこでも変わった所へ行くと、父が本当に幸せそうに振舞うので、それでよかったと確信するのでした。
 ブラジルの南の方に行った時にベット・カレーロ・ワールドという遊園地へ行きましたが、その入り口にはベット・カレーロが白い馬に乗っている大きな看板がありました。馬がタンゴの音楽に合わせて踊る演目がありましたが、父は幸せそのものでした。おそらくずっと一緒だったトラジリオの事を思い出していたのでしょう。それに続き、中世風の馬のショーが繰り広げられ、本当に楽しい時間を過ごしました。
 父は、ハワイへ行ったことがありましたが、もう一度従兄に会いたいと云うので、私も一緒に行きました。ホノルルへ。

第27章  途切れぬ絆

 ホノルル空港に着いた途端、感激のあまり涙が止まりませんでした。
 親戚一同、みんな出迎えに来てくれていました。父の従兄は車椅子で、従姉は杖をついて、そして5人の従弟達と、それぞれの子供たちや孫たちもいました。父はハワイに住んでいる親戚にも好かれていたのです。道理でハワイにもう一度行きたいと願っていたのだと納得できました。深い愛情がそこに漂っていました。
 カラオケや沖縄舞踊、いろんな伝統芸能の他、お料理も沖縄そのものの料理で、沖縄にいるような錯覚を起こしたくらいでした。
 色んな観光地やワイキキビーチで有名なサーフィンも見ることが出来ました。実に見事でした。私はずっと、父を幸せにしたいという一心で働いてきていたが、まさか、ワイキキビーチでそれが実現出来るとは、思いもよりませんでした。
 私の叔父や叔母たちは休む間もなく私たちに色々な絶景を紹介してくれました。
 ある戦艦が沈んだ場所に行った時には、さすがに感動しました。戦士たちの遺体は回収されずに、沈んだままだと聞きました。そこにはお花がいっぱい浮かんでいました。
 泣くまいと思いましたが、戦死した兄たちの事を思い出し、魂の底から湧き出てくる涙を抑えることはできませんでした。
 叔母たちの中の一人が、「あなたたちは幸運を持ってきたのよ」と言い、70年も眠り続けていた火山が噴火したという事でそこまで見に行きました。遠くの山の上から火山の噴火を見ましたが、それも見事でした。真っ赤な溶岩が何キロも流れ、海の水にあたると真っ白な煙を上げていました。

第28章  度は続く

 「お父さん、他にどこか行きたい所ある?」と聞いてみたら、思いがけない返事が返って来ました。「クスコへ行ってみたいね。インカ帝国の遺産を見てみたい」と。