《ブラジル》前代未聞!三権広場を戦車行進で威嚇か=大統領のクーデター予告説も=議会で投票方式投票の日に=下院議長「悲劇的な偶然」

行進する戦車(Pedro Franca)

 22年の選挙でボルソナロ大統領が熱望する「印刷付き電子投票」(ヴォト・インプレッソ)に関して、下院での全体投票が行われる予定だった10日、国家機能の中枢が集まる首都ブラジリアの三権広場で、ボルソナロ大統領とバルテル・ブラガ・ネット国防相の立会いのもと、海軍の戦車などによる軍事行進が行われた。これは大統領による民主主義に対する威嚇行為とみられ、諸方面から強い批判の声が飛んだ。9、10日付現地サイトが報じている。
 10日に軍事行進が行われると発表されたのは9日の午後だった。軍事行進について発表された直後から、連邦議員からは、これがヴォト・インプレッソに関する憲法補足法案(PEC)の投票に対する威嚇行為であることを指摘する声が出ていた。
 左派政党の議員たちは早速、この軍事行進を止めさせるよう、最高裁に訴えたが、ジアス・トフォリ判事がこれを却下した。アルトゥール・リラ下院議長は「悲劇的な偶然」と称してこの行進に対して不快感を示したが、気にせず、この日の投票を決行すると語った。
 10日の行進は午前8時頃から記念大通り(エイショ・モヌメンタル)で行われた。戦車を含む14台の車両は、L4北地点から出発し、三権広場に向けて軍事行進を行った。その間、エイショ・モヌメンタルが通行止めになったり、行進を妨げようとした市民が逮捕されたりする混乱が起きた。
 この行事には、ブラジリアでの軍事行進実施を命じた大統領自身と、7月にヴォト・インプレッソの承認をリラ下院議長に迫ったとされるブラガ・ネット国防相が参加した。沿道にはボルソナロ大統領の支持者たちが集まり、「軍事介入による独裁政権」の実現を求めた。

 海軍の軍事行進は、例年もこの時期に行われているが、通常はゴイアス州のフォルモーザ・教育センター(CIF)で行われるもので、リオ州から来た戦車がブラジリアを通過するのは初めてだ。今回の行進には陸軍や空軍の兵士も参加した上、最高裁前に戦車を停止させる予定であることなどが事前に報じられていた。
 この行動に対し、労働者党(PT)時代の国防相のセウソ・アモリン氏は、「クーデターをほのめかしている」と非難した。一方、テメル政権の国防相のラウル・ジュングマン氏は、「ボルソナロ政権の弱体化の証であり、国際関係に悪影響を及ぼすものだ」と強く批判した。
 ネット上の国民の声でも、これをクーデター予告と取り、ボルソナロ氏を北朝鮮の金正恩総書記と比較して揶揄する声も見られたが、この行進で黒煙をあげて行進した戦車は1台だったことで、むしろ弱々しさを指摘してからかう声も聞かれた。
 他方、連邦議事堂の前では、「民主主義を守れ!」「軍政には戻らない」と抗議する人々の姿も見られた。
 この日の午前から行われた上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)では、オマール・アジス委員長は行進を「みじめな光景」と酷評し、「クーデターは起こさせない」と宣言。ランドルフ・ロドリゲス副委員長も、「クーデターは、大統領を牢獄に入れるために欠けていた要素だった」として、今回の行動の犯罪性を強く批判した。
 この行進は英国ガーディアン紙が強く批判したのをはじめ、国際的にも報じられた。また、グローボ局のコラムニスト、ヴァウド・クルス氏が、「大統領の側近が、行進の目的は議会と最高裁に対する威嚇行為であることを認めた」とも報じた。また、エスタード紙は「軍事行進により、連立与党内の溝が広がった」と報じた。

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