《ブラジル》「軍政なかった」「軍介入は合憲」軍人閣僚が続々と物議醸す

17日のブラガ国防相(Cleia Viana)

 軍人閣僚のヴァルテル・ブラガ・ネット国防相とアウグスト・エレーノ大統領府安全保障室(GSI)長官が、相次いで物議を醸す発言を行い、批判を浴びた。18日付現地紙が報じている。
 ブラガ国防相の発言は17日、下院に召喚された際に行われたものだ。この日の召喚は、同国防相が7月8日にアルトゥール・リラ下院議長に対し、ボルソナロ大統領が熱望する次回選挙での「印刷つき投票」(ヴォト・インプレッソ)の承認を行うよう、三軍の長たちと共に脅迫したとされる疑惑に関する釈明を求められてのことだった。
 国防相はこの席で、「わが国では軍事独裁政権はなかった。もし起こっていれば、今生きていない人が多いはずだ」として、1964~85年の軍事独裁政権を否定。下議たちの反発を招いた。
 ブラジルは死者の数こそ同時期のチリやアルゼンチンでの軍事政権時代より少ないものの、それでも真相究明委員会の発表で434人の政治犯が処刑もしくは行方不明となり、377人に人権侵害の疑いが持たれている。

 ブラガ国防相は今年、1964年にクーデターが起こった3月31日を「平和を守った祝うべき日」と擁護する発言も行っていた。
 同国防相はまた、本題のリラ議長威嚇疑惑に関しては否定し、下院で却下されたヴォト・インプレッソに関しても固執する姿勢は見せなかった。
 一方、エレーノGSI長官は16日、ラジオ局「ジョーヴェン・パン」のインタビューで、「国の秩序を維持するために軍が三権に介入する余地は、憲法142条で認められている」と発言し、最高裁への批判も行った。
 この発言に対しても、ブラガ国防相の軍事政権否定同様、ネット上や識者の間で強い批判が起こった。
 司法関係者や政治家たちは次々と、「142条で定められている軍の役割は、祖国防衛と憲法上の権限の保証、法と秩序の保証であり、軍事介入を意味するような『権力の仲介者』(poder moderador)への言及はない」と反論。昨年まで30年間以上にわたって最高裁判事を務めたセウソ・デ・メロ氏は、1988年にウリセス・ギマリャンエス下院議長(当時)が同憲法を制定した際の逸話までさかのぼって同条の説明を行い、エレーノ氏の解釈を「きわめて腹立たしい」と批判した。

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