《ブラジル》アマゾン有毒魚の奇病「黒い尿」で死者=50人以上が横紋筋融解症に=毒素不明、8月から流行状態

イタコアチアラ市から臨むアマゾン河(Wikimedia Commons, Gabriel_David_R_Botelho)

 アマゾン河上中流のアマゾナス州や北東部バイア州で「黒い尿」(urina preta)が出る奇病が再流行状態となり、死者も出て、住民を不安に陥れていると8月30日~1日付現地サイトが報じている。
 「黒い尿」と騒がれているのは、毒を持つ魚を食べた後、12~24時間で発症する横紋筋融解症(ポルトガル語ではrabdomiolise)のこと。アマゾナス州初の患者は8月21日に確認された。
 同26日には、アマゾナス州イタコアチアラ市で「黒い尿」が疑われる患者が16人おり、内13人が入院中と報じられた。
 横紋筋融解症は、淡水魚や甲殻類などが持つ毒素によって横紋筋と呼ばれる骨格筋細胞の壊死と融解が起こる病気で、激しい筋肉痛や痺れ、腫脹が生じる。融解で筋細胞内のミオグロビン、たんぱく質などが血中に流入する事で脱力や赤褐色尿(ミオグロビン尿)が生じる他、ミオグロビンが尿細管を閉塞させて急性腎不全を起こすと、無尿や乏尿、浮腫も生じる。
 循環血液量減少は呼吸困難やショック症状、歩行困難、胸部圧迫感、麻痺、痙攣なども招き、高カリウム血症が起これば心停止も起こり得る。
 同病関連の報道に出てくるハフ病(Haff)というのは、最初に発生した場所の名前から命名された横紋筋融解症の症候群で、淡水魚などが持つ、熱にも耐える毒素で起きると考えられているが、原因毒素はまだ特定されていない。

患者の総計が50人を超えたと報じる1日付G1サイトの記事の一部

 アマゾナス州のハフ病は症例報告が途切れず、8月22日にはイタコアチアラ市から176キロ離れたマナウス市でも同病の患者が確認され、8月30日にはイタコアチアラ市で起きた一家全員発病例で、51歳の母親が死亡した。
 8月31日付カナルテック・サイトなどは、8月30日現在でアマゾナス州44人、バイア州6人の患者を確認、内1人は死亡と報じたが、1日付G1サイトは、アマゾナス州の患者は8市52人になったと報じた。アマゾナス州の患者中、36人はイタコアチアラ在住で、残りはシルヴェス、ボルバ、マナウス、パリンチンス、カアピランガ、マウエス、アウタゼスで確認されている。
 横紋筋融解症を引き起こし得る淡水魚には、一般の人にもなじみが深いパクーやピラルク、タンバキなどがあげられる。
 イタコアチアラ市では既にフェイラ(青空市)などでの魚の売り上げ減少が起きていたが、アマゾナス州疾病予防財団(FVS)は1日、最低15日間、魚の摂取を控えるよう、同市住民に勧告した。また、アマゾナス州政府は同日、対策班を作り、イタコアチアラ市に専門家派遣と発表した。
 アマゾナス州での同病の流行は、2008年、2015年に次いで3度目だが、死者が出たのは今回が初めてだ。
 他方、バイア州での患者はアラゴイニャス、マラウ、サルバドール、シモンエス・フィーリョ、マッタ・デ・サンジョルジェで発生。発生地や患者数は増えている可能性がある。同州保健担当者は「原因はまだ調査中」としている。北東部では2月にも、ペルナンブコ州レシフェで姉妹2人の同病発症報告が出ている。

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