オンライン授業と対面は共存できる=パンデミック後の日本語教育は《4》=ピラール・ド・スール日本語学校教師 渡辺久洋

冬休みに学校に野球をしに遊びに来た在校生&卒業生(12~24歳の17人、提供写真)

冬休みに学校に野球をしに遊びに来た在校生&卒業生(12~24歳の17人、提供写真)

 日本語学校、日系団体にはそれぞれの事情や考えがあるので、パンデミック後も子どもに対して「オンライン授業」を行うと決めても、それ自体は悪いことではないということは付け加えておきたいと思います。
 ただし、その変更による成果や結果は「対面授業」とは大きく異なり、どのような変化が起こり得るのか十分に推測・想定し、学校関係者と話し合う必要があります。学校の理念・ビジョン・存在意義自体が大きく変わることすら意味していることも理解しておかなければいけません。

 21世紀に入り、ブラジル日本移民百周年を機に、三世、四世、五世といった若い日系人の日系コミュニティへの帰属が促され、非日系人の日本文化への興味や日本語学習熱が高まり、成人の生徒数増加や日伯学園の設立、公教育の科目に日本語が採用される学校が出るなど日本語教育界にとって喜ばしいこともありました。
 ですがこの20年間、「Pos継承日本語教育」を行う日本語学校、また生徒数はブラジル全体として減少傾向に歯止めがかかっていません。
 そこに1年半続いているこのパンデミック。これは戦後のブラジル日本語教育、もしかしたら移民が始まってからの113年目の日本語教育の歴史で最大の危機で、今後の日本語教育に致命的で決定的な出来事になるかもしれないという危機感をずっと持っています。
 ピラールも、去年はオンライン授業と家庭学習を併用していたのですが、低年齢の子が徐々にやめていってしまいました。でも幸いにして今年から対面授業(週3日ですが)を行うことができるようになり、9月からはパンデミック前の週5日制に戻ります。
 その結果、今年これまでに5歳~7歳の生徒が9人入ってきました。日本語学校の生徒数を増やすために(減らさないように)、ブラジルの日本語教育界が一丸となって模索しています。
 ですが、「Pos継承日本語教育」に関してはやはり「対面授業」が最大の効果があることは確かです。言うまでもないことですが、ブラジル全土でその日が来るまで閉校に追い込まれることなく、どのようにして踏ん張り続けるかが今の最大の課題・試練です。
 この20年間、ブラジル日本語センターやJICA、国際交流基金、あるいはそれぞれの地区がこの問題を解決し再び業界が盛り上がるよう、セミナーやシンポジウムや会議など様々な取り組みを行ってきており、ニッケイ新聞やサンパウロ新聞(廃刊)といったメディアも頻繁に協力してくれています。ですが、目に見えた効果は表れていないのが現状です。
 この20年間に閉校になった日本語学校は少なくなく、生徒が減少しながらも存続している日本語学校もあれば、あまり減少することなくこれまで通りの活動を行っている日本語学校もあります。ごく一部ではありますが児童生徒が増加している日本語学校もあるようです。
 では、それらの違いを生み出している要因は何か?
 それが今後の「Pos継承日本語教育」を行う日本語学校の栄衰を大きく左右するカギになると思います。とはいっても、町の規模の違い、文協所属か個人経営か、文協であればその規模、立地条件など様々な要因があるので、単純化して言うことはできません。
(続く)