《ブラジル》パンデミック=画面見過ぎで運動不足=アルコール、タバコ増加=糖尿病患者等に負の生活変化

コロナ禍の影響が出ている病気の一例の糖尿病(Marcello Casal Jr./Agencia Brasil)

 新型コロナの国内感染者確認から560日となり、ワクチン接種の進展などを受けた外出規制の大幅緩和や幼児教育でも対面授業の全面再開承認といった報道が相次ぐ一方、感染終息後も在宅勤務継続を望む人が78%など、生活形態の変化は何らかの形で今後も続く可能性がある。
 在宅勤務継続希望者は昨年の70%から78%に増えた。サンパウロ総合大学(USP)経済・経営・経理大学(FEA)や企業経営院(FIA)の調査結果は5日付エスタード紙などが報じており、在宅勤務の継続希望者が増えた一方、勤務時間が延びる傾向にある事も判明した。在宅勤務者(少なくともその多く)はコンピューターやインターネットを利用しており、画面を見る時間が増えている事を示す。
 画面を見る時間が増えているのは、遠隔授業が増えた教育現場でも同様で、子供の間で近視が増えたと報告されている。また、外出が制限されて自宅にこもりがちになった人がコンピューターや携帯電話でメッセージをやり取りしたりテレビを見たりする時間が増え、運動不足に陥るという悪循環も起きている。
 テレビを含む「画面を見ている時間(tempo de tela)」の増加を問題視しているのは、眼科医だけではない。ブラジル糖尿病学会(SBD)のマーク・バロネ氏の指揮で昨年前半に行われた調査では、糖尿病患者の59・5%は運動量が減少し、59・4%は血糖値が変化、38・4%は定期的な診察や検査延期などの影響が出ていた事を8月31日付現地サイトなどが報じたのだ。

 バロネ氏は非感染性慢性疾患(DCNT)撲滅のための国際フォーラムのコーディネーターでもあり、糖尿病などのDCNTの治療には運動や定期的な診察、検査が必須で、それらが中断されるとすぐに影響が出ると警告している。DCNTはブラジルの死因の75%を占めており、運動や診察、検査の中断が、DCNTによる死者の増加や早期の死を招く可能性が懸念されるという。
 また、ミナス連邦大学の調査では、食生活の悪化、アルコール類の摂取量や喫煙量の増加、画面を見る時間の増加も確認されたという。バロネ氏は、DCNT患者の健康状態を示す指数悪化は心臓疾患や脳血管障害(AVC)、腎臓疾患の増加も招くから要注意と呼びかけると共に、統一医療保健システム(SUS)が患者の増加に注意する必要も説いた。
 糖尿病は新型コロナの治療などで使う薬で増える可能性があり、インドでコロナ患者の真菌感染(黒い菌、ムコール症とも呼ばれる)急増と騒がれた時期に同病との関係も取り沙汰された。
 また、3日付現地サイトは、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)の研究者が、糖尿病は複数の遺伝子の発現を増加させ、免疫系の循環細胞に炎症を起こさせるため、新型コロナに感染しやすくなる事を確認したと報道。メカニズムは解明待ちだが、現段階でも、糖尿病患者の死亡率は非糖尿病患者と同等だが、重症化リスクがより高く、治療も長引く事を確認。国際的な医学雑誌に報告されたという。