《ブラジル》保健省の青少年接種中止勧告に疑問続出=Anvisaは継続を奨励=大統領の煙幕との評価まで

16日午後の保健省の記者会見(Walterson Rosa/MS)

 【既報関連】保健省が15日夜、基礎疾患などがない12~17歳の青少年への新型コロナの予防接種中止勧告を出し、各自治体の対応が分かれている。また、諸方面からは疑問や批判も噴出と16、17日付現地紙、サイトが報じた。
 予防接種中止勧告は、アストラゼネカ社製ワクチンの不足で2度目の接種を中断した州が続出する中で、ワクチンは充分あり、不足による接種中断は各自治体が国の計画に従わず、勝手に接種を進めているからと弁明した直後に出された。
 中止勧告に従った州や市はナタル、サルバドールなどの州都やミナス州などだ。連邦直轄区は最初、勧告に従う姿勢を見せたが、保健局が同日中に中止に値する副反応の報告はないとして継続を決めた。新規感染者の9割がデルタ株となった聖市やリオ市、サンパウロ州など、青少年への接種を進めていた自治体の大半は接種継続を決めている。
 ケイロガ保健相は16日午後、青少年への接種は15日からのはずなのに350万人が接種を受けた上、青少年には非認可のワクチン使用例や重篤な副反応が起きたとの報告がある事、基礎疾患などのない青少年への接種は世界保健機関(WHO)の方針に反する事などを理由に上げた。
 だが、青少年への接種は国家衛生監督庁(Anvisa)も推奨しており、感染予防効果の向上と対面授業再開時の安全策の意味で取り組んでいた自治体も多い。

 また、他社ワクチン使用例は0・04%で、サンパウロ大都市圏在住でファイザー社製ワクチンを接種した16歳少女の死と接種との因果関係は不明だ。WHOは基礎疾患などのない青少年への接種は高リスク者への接種後にと求めているが、接種そのものは禁じていない。
 Anvisaは16~17日、「ファイザー社製ワクチンの青少年への使用差し止めの事由はない」と繰り返し語った。ブラジル免疫学会や全国保健局審議会、全国市保健局審議会なども、中止勧告は相談もなく出されており、接種は継続すべきとの姿勢を示した。
 様々な疑問や批判に輪をかけたのは、16日夜のライブなどで大統領の要請で中止勧告が出たと判明した事だ。15日には、サンパウロ市の病院では大統領が推奨していたクロロキンなどが患者の同意もなく使われ、死者が出た事も隠されていたと告発する文書が上院の議会調査委員会に提出されており、ワクチン不足や配布の不手際を隠すための勧告との憶測に、大統領への嫌疑表面化を防ぐための煙幕説が加わった。
 ライブでは、大統領がコロナバックは科学的に認められていないと再批判。保健相はそれに同意した上、近日中にマスク着用義務もなくなると語るなど、大統領に擦り寄る姿勢を見せていた。