《ブラジル》ヒドロキシクロロキン違法治験の裏に影の委員会?=さらなる疑惑が噴出=データが大統領に直結=反対医師に解雇脅迫

ザノット氏と影の委員会(Twitter)

 【既報関連】サンパウロ市内に複数の病院を運営する高齢者向け大手医療保険会社「プレベンチ・セニオル」でのヒドロキシクロロキンの不正治験疑惑に関し、この治験が、ボルソナロ大統領が保健省とは別に組織していた「影の委員会」が関与している可能性があること、プレベンチの医師や職員が治験に協力しないと報復行為を受けた疑惑などが浮上している。18〜20日付現地紙が報じている。
 プレベンチ社が自分たちの病院で昨年の4~5月頃に、ヒドロキシクロロキンその他の早期治療用Kitの医薬品による治験が、国家研究倫理委員会(Conep)の許可を得ないままに行われた。その結果、クロロキンやアジスロマイシンの治験で7人が死亡していたにもかかわらず、その情報が隠され続けていたとする16日のグローボニュース局の報道は、直ちに全国に激震を走らせたが、その後の報道でさらなる疑惑が報じられている。
 サイト「メトロポレ」は18日、独占スクープとして、この治験には「影の委員会」が関与している可能性が高いことを証拠映像つきで報じている。クロロキンをコロナ治療薬として処方することを望む大統領が、それに反対するルイス・エンリケ・マンデッタ(当時)保健相らに隠れて組んでいた非正規な組織が「影の委員会」だった。
 メトロポレが証拠として示したのは、その「影の委員会」のメンバーのひとりで細菌学者のパオロ・ザノット氏が、昨年の4月5日に行ったプレベンチ元主任のペドロ・バチスタ・ジュニオル氏とのネット上の生座談会だ。これは、ボルソナロ大統領自身がこの日にツイッターで拡散し、支持者に見るよう勧めたものだ。

 ザノット氏とペドロ氏はこの際、もう一人の参加者から「なぜ連邦政府はクロロキンによる処方を病院で行わないのか」を尋ねられているが、この言動で疑惑を深めている。
 ザノット氏は、「私の役目は海軍退役医官のルシアノ・アゼヴェド氏やニーゼ・ヤマグチ医師と共にいることだ。彼らは今ブラジリアにいて、連邦政府高官と話している。この座談会も見ていると思う。ペドロも知っているが、彼らと政府高官は君たちが考えているよりもずっと近い関係にある」と返している。アゼヴェド氏、ヤマグチ氏は共に、上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)で疑惑の人物として調査対象になっている。
 ザノット氏は続けて、「ルシアノは、ペドロを訪れて見た全てのデータを持ち帰った。これらはプレベンチや連邦政府にとって非常に興味深く、素晴らしい内容だ。この情報は他国の政府にも拡散されている」と語っている。
 バチスタ氏はこれを受け、「ルシアノ、ニーゼ、ザノットの各医師たちは、我々が行った研究の結果を集めていった」と答えている。
 さらに17日、プレベンチ社の元女性職員が昨年8月にサンパウロ市市警にプレベンチ社の治験時の内幕を告発していたことも報じられた。この女性によると、治験は「コロナの感染を疑ってプレベンチを訪れたばかりで、まだ何の検査もしていない人に対してまで行われていた」といい、さらに「治験に反対している医師たちも解雇をおそれるあまり、ヒドロキシクロロキンを受け入れざるをえなかった」として、反対する医師たちに何らかの報復行為があったことをうかがわせている。
 この職員は、看護師たちにはマスクも使わせないなど、医療従事者への感染予防策がとられていなかったこと、早期治療用Kitの中には心電図などを併用する必要がある薬もあるのに、それらの措置が行われていなかったこと、Kitの薬使用には経費節減のために入院を回避する目的などもあったことなども明かしているという。

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