《ブラジル》CPI延期してプレベンチ・セニオル捜査続行=入院者の22%、4千人死亡=異常な数字とANS疑問視=サンパウロ州議会も解明に乗り出す

コロナ禍CPI(Edilson Rodrigues/Agencia Brasil)

 上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)は今週も、クロロキンの不正治験とそれに伴う死者の隠蔽疑惑に揺れる高齢者向けの大手保険会社プレベンチ・セニオルに関する捜査を進める。28日には「プレベンチ側が疑惑を告発する文書の作成に関与した医師を解雇するなどの行為に出た」とする弁護士などが召喚される。27日付現地紙、サイトなどが報じている。
 プレベンチ役員で医師のペドロ・バチスタ・ジュニオル氏は23日のCPIで、同社傘下の医療機関の医師と元医師12人が作成した告発文書は虚偽であると主張していた。
 だが、告発を行った医師たちの弁護を務めるブルーナ・モラート氏によると、昨年の3月頃から、プレベンチが医師や看護師らをマスクさえ使わせず、新型コロナに感染していても働かせた上、早期治療用のKit―Covidに含まれているクロロキンなどの医薬品の処方を強要して、違法な治験を行っているとの訴えを受けていたという。同氏は、「医師たちには時間をかけて証拠や書類の提出を求め、治験患者にそれらの確認もさせた」としている。
 CNNブラジルが23日に報じたところによると、モラート弁護士は、プレベンチが22日に報告書作成に参加した彼女の顧客1人を含む医師4人を解雇したとの報告をCPIに報告していたことを音声記録とともに報道している。彼女によると、プレベンチは告発した医師たちを「迫害し、汚名を着せ、失格者の烙印を押す」ことで、他の医師への見せしめにしているという。
 CPIは29日に、ボルソナロ大統領支持派の企業家としても有名なスーパー「アヴァン」社長で、影の委員会のメンバーともされているルシアノ・ハン氏の召喚も行う予定だ。ハン氏の母親のレジーナ氏(82)は、今年の2月にコロナ感染症でサンパウロ市のサンクタ・マジオーレ病院で亡くなった。「(クロロキンを含む)Kit―Covidが処方されていれば母は助かったのに」とするハン氏の主張に矛盾するように、CPIに提出された書類ではレジーナ氏は複数回にわたってKit―Covidによる治療を受けていたとされている。また、彼女のカルテは改ざんされており、死因が隠蔽されていた。

 また24日には、国家医療サービス監督庁(ANS)が、プレベンチのクロロキン治験に関与したとみられる85人の医師と約100人の患者からの事情聴取を行っていることが報じられている。
 ANSは同時に、プレベンチの抱える年間患者数が、この1年間で51万人から54万2500人に増えていること、プレベンチ関連の医療機関で入院した1万8千人のうち、22%にあたる4千人もの人が亡くなっていることも疑問視している。
 上院でのコロナ禍のCPIは9月いっぱいで終わる予定だったが、プレシーザ社の家宅捜査が行われた時点で、報告書の提出、承認は10月になるとされていた。CPIはこれまでの5カ月間でプレベンチの疑惑に関連する証人喚問の対象として126人をリストアップしていたが、現在までに召喚できたのは53人で、さらに3人を今週中に召喚する意向だ。
 その一方で、サンパウロ州議会が現在「プレベンチ・セニオルに関するCPI」の開設を求めて動き始めており、27日現在で33人の州議の署名を集めている。同州議会でCPIを開設するには、32人の州議の署名が必要だ。