《ブラジル》パンドラ文書 経済相や中銀総裁にも疑惑?=オフショア企業で租税回避か=本人「申請済みで問題なし」=中南米の企業家や大統領も

ゲデス経済相(Agencia Brasil)

 3日、世界の名だたる政治家、企業家、有名人が租税回避地(タックス・ヘイヴン)にあるオフショア企業を介してペーパー・カンパニーを作って脱税などを試みていた疑惑を伝える「パンドラ文書」が公表された。英国のトニー・ブレア元首相やチリのセバスチャン・ピニェラ大統領などの大物が名を連ねているが、ブラジルからもパウロ・ゲデス経済相、ロベルト・カンポス・ネット中銀総裁のほか、国を代表する企業家たちがオフショア企業を利用し、国外に資産を所有していることが判明した。3、4日付現地紙、サイトが報じている。
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が3日に公表した文書は、1年以上にわたる調査を通して入手した資料で、1190万件のファイル、合計2・94テラバイトという膨大な量に及んだ。同文書では、全世界の政治家や企業家、有名人らが、英国領ヴァージン諸島、パナマ、クック諸島などの租税回避地にオフショア企業を通してパーパーカンパニーを開き、税金対策を行っていたとされる疑惑が次々と浮上した。
 国際的には英国のブレア元首相やヨルダンのアブドラ国王など、現・元首脳クラスの人物が代表格として報じられているが、この影響はブラジルでも大きなものとなった。
 ブラジルで取り上げられた最大の人物はパウロ・ゲデス財相だ。この文書によると、ゲデス氏は2014年にヴァージン諸島にオフショアの会社を創設。その後、ニューヨークにあるスイス系の銀行にオフショアの口座を開き、955万ドル、当時の値打ちとして2300万レアル、現在の価値にして5100万レアルを入金したという。同氏の会社は現在も活動しており、ニューヨークの口座も有効だという。

 オフショアの会社や口座を持っていること自体は連邦国税庁や中央銀行に届け出が行われ、正当な金が動いている限り、違法ではない。だがブラジルでは、重要な公職に就く場合、自分に有利になるような法案の提出や審議に加わり、自己利益を生むことを防ぐため、オフショアは全て申告することや経営から手を引くことなどが義務付けられる。
 ゲデス氏は、「2019年1月の経済相就任と同時に国外口座に関する情報を公的倫理委員会に申請した」と主張している。だが、この件が同委員会で審査されたのは2年半後の21年7月で、そのときに「違法性なし」とお蔵入りさせている。だが、同委員会の審査の姿勢にはかねてから強い疑問が持たれている。
 また、カンポス・ネット中銀総裁も、総裁就任15カ月後の現在もまだ、オフショア口座を所有し続けていることが判明した。同総裁はこれに関し、「法律に従い、口座は使っていない」と主張している。
 この文書ではこの2人のほかにも、現在クロロキンの不正治験疑惑に揺れる保険大手の「プレベンチ・セニオル」や、不動産大手のMRV、民間金融のクレフィーザ、衣服大手のリアシュエロなどの経営者によるオフショア口座所有などが指摘されている。
 南米規模でもチリのピニェラ大統領、エクアドルのギジェルモ・ラッソ大統領、ドミニカのルイス・アビナデル大統領、コロンビアのセサル・アウグスト・ガビリア、アンドレス・パストラーナ元大統領ら、現職大統領3人と元大統領11人に政治家90人などのオフショアが指摘されているなど、波紋を広げている。
 下院では、ゲデス経済相とカンポス・ネット中銀総裁を自己利益を図った疑惑で告発し、釈明を求める動きが出はじめている。

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