日系企業にコロナ対策を聞く=コロナ禍で売上げ増加=機械増やしてフル稼働=食品用プラスチックパッケージ(容器)の製造、販売=スターパック社

西川渥社長

コロナ禍で売上げ伸長

 【日本政府支援事業「サンパウロ日伯援護協会」コロナ感染防止キャンペーン】新型コロナウイルスの影響で外食の機会が減り、代わって台頭したのがデリバリーサービスだ。それに伴って、以前に増して成長しているのが、食品用プラスチックパッケージの製造業といえる。コロナ対策に必要な業界として、パンデミックに入ってからも連邦政府・サンパウロ州政府が操業及び通常営業を認めてきた業界の一つだ。
 スターパック社の西川渥社長の「パンデミックに入ってから今日まで、100人だった従業員は140人に増え、今年末までに製造機械を増やし、フル稼働しています」との言葉は、その流れを証明する。

「新型コロナ感染予防行動計画表」

 西川氏は、パンデミック当初から以前と変わらず操業してきたサンパウロ州イタクアケセツーバにある自社製造ラインのために、緻密な「新型コロナ感染予防行動計画表」を作成した。それに基づいて感染拡大防止に努め、これまで数人の感染者が出ても、全員回復して職場に戻ることができた。
 この計画表は「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」を明記し、どう予防対策を行うかがリストアップされ、その費用や実施状況のデータも定期的に更新されている。
 全25項目の第1項目には、昨年3月18日から5月20日までの間に、全社員がPCR検査を受けることが義務付けられ、100%実施されたことが記録されている。
 第2項目以降も、行政のガイドラインに則った対策をはじめ、2カ月に一度の給料日に、アルコール、アルコールジェル、マスク、タオルを自社製造のパッケージに詰めた衛生キットを配布するなど、会社独自の対策も示されている。
 工場は24時間稼働し、従業員は3交代制で働いているため、8時間ごとに機械を全て消毒するなど、社員の安全を守るために細心の注意を払ってきた。
 今年10月時点で、全従業員が1回目のワクチン接種を終え、2回目は約半数。接種した証明書は会社に提出することが義務付けられ達成されている。

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値上がり前には注文が殺到

スターパック社が製造する食品パッケージの一部

 昨年3月から5月にかけて、世界中の多くの会社の仕事がペースダウンしたため、プラスチック容器の原料も値上がりした。
 しかし、同時期にデリバリーサービスが急速に売上げを伸ばし、ブラジル全土のデリバリーサービスの特定パッケージを同社が引き受けることになった。
 注文が止まることはなく、パンデミック前の2019年に購入していた製造用機械が到着したのに加え、新たに2台を購入し、それでも間に合わないので今年新たに1台を追加購入した。
 「お客様に商品の値上がりを伝えると、値上がりする前日には注文が殺到します」と話す西川氏。最近特に売れ行きが伸びているのは、プラスチックのふたを必要としない、コストの安いシールタイプのフタの商品であるという。常に時代の流れを見ながら顧客の声に耳を傾け、新商品を開発してきた長年の積み重ねが、偶然、今回のコロナの波に乗った。

新型コロナで目の前に死がよぎり

 だが、パンデミックに入ってから約4カ月は、サンパウロ市内の事務所への出社は原則禁止し、事務職はリモートワークを実施した。西川氏自身も同様で、穏やかに在宅ワークをこなしていた。
 しかし、サンパウロ市の気が緩み始めた昨年12月、国内旅行から戻った子供より新型ウイルスに感染し、妻ともう2人の子供にも陽性反応が出た。特別な自覚症状はなかったが、西川氏だけが即日入院することになり、酸素吸入と薬を飲みながら様子を見守る日々が続いた。
 その間、肺活量の数値が正常値より大きく下回ることもあったが、約2週間の入院で陰性反応となり、無事に退院することができた。
 西川氏はその経験により、「新型コロナで死が目前に迫り、日々の小さな煩いがなくなりました」という心境になった。そして、これまで以上に、父親から教わった「正直、義理、礼儀」を信条に生きることを心がける気持ちが強まったという。
 「コロナに翻弄されず、今後も『武士道』の精神でブラジル社会に貢献していきます」と、決意を新たにした。

スターパック社 starpack

 西川氏は兄弟で1984年にスターパックの前身となるSunnyvale社を創業し、2002年にスターパックとして独立。食品用プラスチックパッケージの製造、販売し、その商品は冷凍庫や電子レンジの包装、病院、和食、洋食、お菓子、サラダ、食品会社向けなど、10以上のアイテムがあり、注文に応じたパッケージも開発している。【サイト】http://starpackplasticos.com.br/