JICA日系社会研修50周年式典=計15ヵ国から計4898人=北岡理事長「人材育成を重視」

会場のテレビ画面で映し出された北岡伸一JICA理事長のあいさつ

会場のテレビ画面で映し出された北岡伸一JICA理事長のあいさつ

 国際協力機構(JICA、北岡伸一理事長)による日系社会研修50周年式典が、10月30日午後7時からサンパウロ日伯援護協会内で開催され、オンラインでも一般公開された。オンラインで日本とブラジルをつなぎ、帰国研修員たちの体験談や祝福メッセージのビデオレターが寄せられ、これまで多くの日系社会の人材育成に寄与してきた研修の成果と意義を振り返った。

 現在、日系人は全世界で約360万人。ブラジルは世界最大の日系人居住地であり、その数は約200万人に上る。JICAは前身の海外移住事業団時代、農業移住者の後継者育成を主な目的として、1971年から移住者子弟技術研修事業を開始した。

挨拶する江口雅之JICAブラジル事務所長

挨拶する江口雅之JICAブラジル事務所長

 第1回研修には、ブラジルを含む5カ国から研修員が参加し、その後もJICAが担ってきた移住研修事業と日系研修事業は、2020年までに計15ヵ国から計4898人の研修員を受け入れ、ブラジルからは計2881人が参加した。
 北岡理事長は開会あいさつで、1871年に岩倉使節団が西欧を視察した際、留学生を連れていたことを引き合いに出し、西洋の知見を学んだ人材がその後の日本の近代化の大きな原動力となったことを紹介。
 「日本は古くから人材育成を重視し、『国造りは人造り』がJICAのモットーです」と述べた。
 現在の日系社会研修は、医療、福祉、農業、IT、民間連携、継承日本語教育、伝統芸能などで、時代環境に応じて発展している。
 江口雅之ブラジル事務所長によると、パンデミック下における中南米の日系社会研修は、オンラインで実施してきた。来年から日本へ渡航して研修ができるかは、感染状況や日本政府の入国措置により検討される。
 2019年からは日系団体の活動に関わっている非日系人も参加できるようになった。また、2021年からは多文化共生推進プログラムを開始し、日本におけるブラジル日系社会が抱える課題解決をサポートする中南米の人材を派遣する。

剣道指導者育成第1期生中原明美さんと高山トーマスさん

剣道指導者育成第1期生中原明美さんと高山トーマスさん

 帰国研修員から寄せられたビデオレターには、1971年の農業研修第1期生でパラー州カスタニャールでトロピカルフルーツを生産する武藤義博さん、1972年の第2期生でサンパウロ州グアラレマで花卉栽培を行う佐藤良洋さん、1980年に医学研修第2期生として慶応大学病院で消化器内視鏡を学び、帰国後はペルナンブコ医科大学で教授を務めた岡崎勝一さんほか、親子3世代で各種研修を受けた家族3組が登場し、祝辞と体験談を語った。
 また、モザンビークで第3国専門家の医師として活躍する元研修生の伊藤ルーシー小百合さんと、彼女の実績に感謝する同国のアントニオ・パウリノ・ロドリゲス保健相国家保険専門家養成局長官がメッセージを送った。
 昨年1月から2月にかけて、ブラジル剣道連盟から剣道

太鼓研修に参加した研修生による和太鼓演奏

太鼓研修に参加した研修生による和太鼓演奏

指導者育成第1期生として、三重県で40日間の研修を受けた中原明美さん(35歳)と高山トーマスさん(25歳)は、剣道演技で研修の成果を披露した。二人を受け入れた三重県剣道連盟の長谷川恵一理事長は、「日本ではどこでも剣道ができる環境があり、稽古が雑になってしまうこともありますが、二人が毎日稽古に励む姿を見て、三重の仲間には良い刺激になったと思います」と述べた。

 高山さんは、「日本にはたくさんの強い剣士がいて、ブラジルでは学ぶのが難しいことも多く学べました。仲間もとても優しくしてくれました」との思い出を語った。
 最後に、ブラジル各地から太鼓研修に参加した10人のメンバーが集結し、飛跳(とんばね)太鼓を披露した。
 式典の様子は以下リンクから再生できる。▼日本語(bit.ly/jica50anosjp)▼ポ語(bit.ly/jica50anos)