《ブラジル》ルーラが欧州で首脳待遇=独仏で国家元首級とも会談=環境問題などで意気投合=アウキミンとの噂否定せず

17日のルーラ氏とマクロン氏(RICARDO STUCKERT)

 次期大統領選への出馬が有力視されているルーラ元大統領(労働者党・PT)が欧州を訪問し、ドイツの次期首相候補やフランスのマクロン大統領と会談を行うなど、積極的な行動で注目を浴びている。17、18日付現地紙、サイトが報じている。
 今回のルーラ氏の欧州訪問は、ドイツのフリードリヒ・エーベルト財団の招待を受けて実現した。同財団は、PTと長年交友関係にある同国の中道左派政党、ドイツ社会民主党(SPD)元党首で、ドイツ国初代大統領だったフリードリヒ・エーベルトの政治的遺産として設立された非営利の政治団体だ。
 ルーラ氏は11日にベルリンで、同財団のマルティン・シュルツ会長と面会した。同氏はSPDの元党首というだけでなく、欧州議会の議長(2012〜17年)もつとめた、欧州政界の大物だ。
 また、翌12日には、SPDのオラフ・ショルツ党首と会談を行った。SPDは9月26日に行われた連邦議会選挙に勝利。現在は連立政権を立ち上げるための方策を摸索中で、ショルツ氏は次期ドイツ首相の最有力候補とされている。
 この日の会談後、ショルツ氏はツイッターでルーラ氏について、「是非ともこの対話を続けていきたい」と喜んだ様子で語っている。
 15日、ルーラ氏は欧州議会から招かれ、ベルギーのブリュッセルで演説を行い、ブラジル人政治家としてはごく珍しいスタンディングオベーションを受けた。同議会では、ラテン・アメリカに関するカンファレンスが行われており、ルーラ氏は環境問題の重要性や極右勢力との戦いについて語って、好評を博した。

 また、ルーラ氏はこの日、欧州議会で行われた記者会見で、来年の大統領選でジェラウド・アウキミン元サンパウロ州知事とシャッパ(連立名簿)を組む可能性について訊かれた。アウキミン氏は2006年にルーラ氏と大統領選を戦っているが、アウキミン氏が民主社会党(PSDB)を離脱する可能性が極めて高く、移籍先の党でルーラ氏の副候補になることが噂されている。
 ルーラ氏はアウキミン氏に関し、「私が大統領、彼がサンパウロ州知事の時期にも何度も話し合っており、いい関係にある」「彼との間では和解できないようなことは何一つ起きていない」と語り、シャッパの可能性を否定しなかった。
 翌16日にはパリに渡り、アンヌ・イダルゴ市長との面会を果たしている。同市長は同国の左派政党、社会党の所属で、かねてからルーラ氏やPTに好意的だった。2020年にはルーラ氏に名誉市民の称号を与えている。同市長は9月、来年4月に行われるフランス大統領選に社会党から立候補する意向も表明している。
 17日はさらに、エマニュエル・マクロン・フランス大統領と会談を行い、これまで以上に注目を浴びた。それは、マクロン氏が欧州首脳の中でもとりわけボルソナロ大統領に厳しい姿勢をとっている人物であるためだ。マクロン氏は、パリ協定を守らず、森林伐採や森林火災の増加を容認し続けるボルソナロ氏をたびたび批判している。
 この会談で両者は、気候問題や飢餓、貧困の問題、欧州連合(EU)の将来、南米との関わりなどについて話し合ったという。
 18日にはスペインに渡り、ペドロ・サンチェス首相と会談後、パンデミック後の回復に関するセミナーに参加。「PT政権が採用した飢餓対策によってブラジルは国連の飢餓対策国リストから抜け出した」などとして、「飢餓は乗り切れる」と語った。

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