「時空と世界を超えて」テーマに=第61回海外日系人大会(下)=メディアや日系社会の今後討論

パネルディスカッション「日系メディアと日系博物館の役割」モデレーターの柳田利夫慶応義塾大学教授

パネルディスカッション「日系メディアと日系博物館の役割」モデレーターの柳田利夫慶応義塾大学教授

 海外日系人協会(平井伸治会長、横浜市所在)が日本時間10月30・31日と2日続けてオンライン開催した『第61回海外日系人大会』の2日目は、シンポジウム「コロナとたたかう日系社会今後の課題と挑戦」が開催され、「日系団体の活動とその活性化」「日系メディアと日系博物館の役割」「在日日系社会の課題と挑戦」という三つの議題が討論された。
 そのうち「日系メディアと日系博物館の役割」では、コメンテーターのひとりメキシコ社会人類学研究所東北部キャンパスの平井伸治教授が「4団体の事例から読み取れる重要なキーワードは多文化共生」との所感を語った。
 もう1人のコメンテーターで海外日系新聞協会の岡野護専務理事兼事務局長は、「将来はウェブの活用がより活発化される。日系メディアによる発行の積み重ねが将来のアーカイブとなり、各地の史料館の史料としての価値も大きくなっていくと思います」とコメントをよせた。
 このパネルディスカッションでは、日本国内外の日系メディアと博物館に分野を分け、各分野から招いたパネリストが団体の歴史や活動と役割について紹介していき、コメンテーターが総括や知見を語った。

コメンテーターの岡野護さん

コメンテーターの岡野護さん

 モデレーターを柳田利夫慶応義塾大学教授が務め、パネリストには北米報知の室橋美佐編集長、キョウダイ・マガジン発行人の木本加志子氏、カナダ日系博物館のシェリー・カジワラ館長、JICA横浜海外移住史料館の中根卓館長が出演した。

 パネルディスカッション中には質疑応答も多数寄せられ、時間の都合により質問の中から「これから地方の小さな史料館が何か取り組む際の助言」や「北米報知やキョウダイの今後の展開」の2点が取り上げられた。
 パネルディスカッションの後にJICA横浜移住資料館が今年6月30日まで募っていた『第2回JICA海外移住「論文」及び「エッセイ・評論」』の結果発表も行われた。

メンテーターのメキシコ社会人類学研究所東北部キャンパスの平井伸治教授

メンテーターのメキシコ社会人類学研究所東北部キャンパスの平井伸治教授

 論文部門の最優秀賞には「異境での戦時体験を記録して―マリオ・ボテーリョ・デ・ミランダと岸本昻一を事例に―」ソアレス・モッタ・フェリッペ・アウグストさん(大阪大学大学院文学研究科国際交流センター特任助教グローバル日本学教育研究拠点兼任教員)、優秀賞に「ディアスポラ・ナショナリズムとしてのカチマケ抗争の再考:バストスとレジストロの比較を通じて」柴田寛之さん(インディペンデント・スカラー)が入賞した。
 エッセイ・評論部門の最優秀賞作は「知識の力―カーニバルから見たブラジルと日本―」片山恵さん(国際交流基金ブタペスト日本文化センター日本語教育専門家)、最優秀賞作は「日本人の中南米移住に関する歴史継承と多文化共生―沖縄県における移民の歴史啓発事業を一例に―」飯塚陽美さん(東京大学大学院総合文化研究科)が入賞した。