1

繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(25)

 ロスからニューヨークまでヒッチハイクをする長島らの脱サラ組が、節子さん松子さんの大村姉妹をドライブに誘った。姉妹の義姉・三枝子さんも同行すると云い出したので「それはない、たまには夫婦水入らずで・・・」と、姉妹はドライブを断った。
 航海中、亭主は悪友と麻雀、女房は他の男とダンスに夢中やったから、兄思いの妹さんが気を利かしたんやろけど、どっこい、脱サラの連中は船で知り合った若い二人を連れ出しレイプし、アメリカで放り出すつもりだったと後で知らされ,二人は顔色を失った。
 ロスで変な日系人が乗船した。サンパウロに帰ると云ってたが、ミーがどうしたとかユーがどうとかしゃべり、胡散臭く感じた催氏が怒鳴りつけて少しは口数が少なくなった。当時、日本にも増えた不良外人のたぐい。
 今の日本では、もっと悪くなり、外人犯罪が激増してると聞いている・・・。パナマ運河の航行は印象的だった、水位の異なる太平洋と大西洋をつなぐ大掛かりな仕掛けは、完成当時では月に行くより難しい技術だったのではないかと思う。
 パナマで富ちゃんからの手紙を受け取った。「寄港地宛に手紙を書けば、あなたに届くのを忘れてました・・・」。かわいそうに長崎駅頭で別れてからは、放心状態だったらしい。それからは寄港地毎に、郵便船で運ばれて来る愛情のこもった手紙を受け取るほど航海中、嬉しいことはなかった。
 「あなたの赤ちゃんが欲しくなりました」とか「指輪が欲しい」とか「楽しかった日々を想い出すと、お乳が痛くなります」とか、もう傍に居れば抱き締めたくなる文面。このまま引き返したくなるほどだった。
 カリブ海のキュラソーでアメジストの指輪を免税で買い、フィルムの缶に入れて送った。彼女が、それを心電計の代理店の長崎写真商事に持って行き、べた焼きで現像を頼むと、支配人が「フィルムではないようですが・・・」と。
 「未だ目的地に着いてないのに指輪を買ってくれたのが、とても嬉しく下腹部が××××ました」と書かれた情熱の手紙が、次の寄港地ラガイラに届いた。
 南国の空はるか、いとしい富ちゃんの面影がベネズエラの空に浮かび、ク××××の蠢きに想いを馳せた。
 “はるばる来たぜ、南米!”ラガイラの港から、カラカスへ観光に出かけた。最後の寄港地めぐりを思う存分楽しんだ。
 闘牛場や建国の英雄ボリバールの銅像等に、15世紀から16世紀にかけての大航海時代にポルトガルと覇を競ったスペインの栄光を偲び、当時の日本では豊臣秀吉が宣教師達を殺害したので日本は植民地にならずに済んだのが理解できた。
 なぜなら、彼等のやり方は宣教師を目的の国に送り込むことにより、先ずその国の国民を味方につける。ついで、信者となった者から国の内情を得て、本国へ報告する、という手口だ。フィリッピンが、いい例で中南米のすべての国も、この両国の植民地となった。
 ボリバールの名前が国の名前になったボリビアやコロンビアも、ベネズエラと同じ国だったと知った。今では、それぞれ独立国として、石油産出国のベネズエラが栄え、麻薬マフィアのはびこるコロンビアはテロが横行し、鉱物資源の途絶えたボリビアは南米の最貧国に近い現状に甘んじている。