《ブラジル》ルーラのグアルジャー裁判お蔵入りか=DFの検察局が再審求めず=「年齢による時効」理由に=同容疑で既に1年半服役も

グアルジャーの三層住宅(Twitter)

 連邦直轄区検察局が7日、ルーラ元大統領(76歳)に対するサンパウロ州の高級三層住宅を介した贈収賄容疑に関する捜査継続を諦め、お蔵入りさせる意向を示した。これが連邦地裁で了承されれば、ルーラ氏が2018年から19年にかけて服役した容疑が消滅することになる。7、8日付現地紙、サイトが報じている。
 この件は、建築大手のOAS社が、ペトロブラスの事業契約で口を利いた見返りとしてサンパウロ州海岸部グアルジャーの高級三層住宅をルーラ氏に贈り、改築も無料で行ったとされるもので、関係者が贈収賄や資金洗浄に問われていた。
 ルーラ氏は17年7月に、セルジオ・モロ判事が担当した1審で9年6カ月、18年1月の2審では12年1カ月の判決を受け、18年4月から服役。この年の大統領選への出馬を禁じられた。
 だが、19年6月にモロ判事やパラナ州検察局ラヴァ・ジャット特捜班のメンバーの携帯電話の記録がハッキングされ、これらが暴露される「ヴァザ・ジャット報道」が起きた。これにより、ラヴァ・ジャット特捜班がモロ判事と癒着し、OASのリオ・ピニェイロ元社長にルーラ氏が不利になるような証言を行わせていた様子が報じられた。
 これを受け、最高裁は19年11月にルーラ氏を釈放。21年3〜4月にはルーラ氏に関するラヴァ・ジャット裁判の判決が無効化され、「モロ判事が同氏の裁判で偏った判断を行った」とする決定も下された。
 これにより、ルーラ氏の容疑に関する裁判の管轄は、パラナ州連邦地裁から連邦直轄区連邦地裁に移った。これにより、同件の捜査はゼロから再開されることになり、パラナ州のラヴァ・ジャット特捜班が集めた証拠を再利用することもできなくなった。

 これらの事情を受け、連邦直轄区検察局のマルシア・ブランドン・ゾリンジェル捜査官は「時効」を理由にグアルジャーの件のお蔵入りを地裁に求めた。
 同捜査官によると、70歳を超えると刑期は通常の半分になるため、同件によってルーラ氏に懲罰を加えることができる期間は既に過ぎており、時効となっているという。
 また、ラヴァ・ジャット特捜班が有罪の証拠として使ったものは再利用できず、ゼロから捜査を行う場合、時効に関する法令で定めた期間までに捜査を終えることは不可能だとも説明している。
 連邦直轄区地裁がこの要請を正式に了承した場合、ルーラ氏がラヴァ・ジャットでかけられた容疑で最大だったものが完全に消滅することになる。同件は既に3審まで進み、有罪とされていた。
 ルーラ氏は3月の最高裁の判断でグアルジャーの判決が無効となったことで、フィッシャ・リンパ法(2審以上で有罪となった場合は出馬禁止)に抵触しなくなっていた。また、仮に連邦直轄区地裁で1審からやり直すにしても、来年の大統領選までに2審での有罪判決がでることは不可能と見られてはいたが、それを決定付けた。
 この報道を受け、ルーラ氏の担当弁護士のクリスチアーノ・ザニン氏とヴァレスカ・テイシェイラ氏は、「これでモロ氏やデルタン・ダラグノル氏らがルーラ氏を大統領選に出馬させないためにでっちあげた裁判は終わる」との声明を出した。
 モロ氏は、法的な再解釈によってグアルジャーの三層住宅に関する嫌疑が葬られたことを認めたが、汚職によって引き起こされた損害は決して修復できないから、時効が適用されない犯罪であるべきとの考えも示した。ダラグノル氏は、裁判の遅れが捜査の継続を阻み、時効成立を許したとの見解を明らかにした。