《ルーラ》南米左派の再団結呼びかけ=アルゼンチン大統領が歓待=民主主義復帰祝う集会で=ボルソナロが早速反発?

集会でのルーラ氏ら(Ricardo Stuckert)

 ルーラ元大統領は10日、アルゼンチンのブエノスアイレスで行われた「民主主義復帰式典」の集会に参加。同国のフェルナンデス大統領の支持者たちから喝采を受けた。ルーラ氏のこの集会への参加が、ボルソナロ政権とアルゼンチンとの仲をさらに険悪にするのではないかと懸念する声も出ている。11〜13日付現地紙が報じている。
 ルーラ氏のアルゼンチン訪問は10日からで、この日は同国政府が人権擁護に努めた人に与える勲章の授与式が行われた。
 また、11日にブエノスアイレスの5月広場で行われた集会は、1983年の民政復帰から38周年となったのを祝うもので、フェルナンデス政権が主催。ルーラ氏はウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領などと共に、ゲストとして招かれていた。
 ルーラ氏の紹介は、元大統領でもあるクリスチーナ・キルチネル副大統領によって行われた。クリスチーナ氏が紹介し終わらないうちに、会場からは「ルーラが戻ってくる」との大合唱のコールがわき起こり、ルーラ氏が登壇すると熱狂的な歓声が会場に響き渡った。
 ルーラ氏は挨拶として、自身が服役中だったときに、アルゼンチン国民とフェルナンデス大統領が自分の無実を信じ、支え続けてくれたことに感謝した。ルーラ氏はそのときのエピソードとして、フェルナンデス氏がパラナ州の連邦警察まではるばる足を運び、面会に来てくれたことを語った。
 「私は、『あなたは(2019年に)大統領選を控えている。その状況で私に面会しては差し障るのでは』と事前に断ったのだが、『いや、民主主義を守るため、無実の罪を着せられた人を見舞わないわけにはいかない』と言って私のところに来てくれた」とルーラ氏は真相を明かした。

 ルーラ氏はまた、「2000年代は南米にとって民主主義が最高潮に達した歴史的な時代だった」として、ベネズエラのウゴ・チャベス氏やボリビアのエヴォ・モラエス氏、クリスチーナ氏の夫だったネストル・キルチネル氏、ムヒカ氏の名前をあげて称え、この日が戻ってくるよう、さらなる団結を呼びかけ、喝采を受けた。
 ルーラ氏はこの集会の模様を自身のSNSでも拡散し、「民主主義の記念すべき日」と称した。
 ルーラ氏は12日にも、ムヒカ氏と共に、フェルナンデス大統領が主宰する「民主主義について」のビデオ上での特別講座を行い、「民主主義はよりよい、またより大切な統治の方法だ」と語っている。
 連邦政府は8日、17日にブラジリアで行われる予定だったメルコスルの首脳会談を、(オミクロン株の感染者が出たりして、感染状況が悪化しているため)「対面参加ではなく、ビデオ参加とする」と発表した。
 表向きは新型コロナの新変異株出現が理由だが、政府関係者の間では、この背景に、22年の大統領選でボルソナロ氏と争うことが予想されているルーラ氏を集会に招いたフェルナンデス氏への抗議の意味があることは明らかとの見方が広がっている。
 ブラジル、アルゼンチン大統領の不仲は、2019年に行われたフェルナンデス氏の就任式にボルソナロ氏が出席を拒否した頃から続いているが、南米で最大の貿易国である両国のさらなる関係悪化が懸念されている。