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「朝シャン」を楽しもう

グルメクラブ

2005年12月09日(金)

 一九八七年。この年は何かと「落ちた」年として記憶される。
 八月にノースウエスト、タイ両航空機が相次いで墜落。十一月二十八日には南ア航空のジャンボ機がモーリシャス沖に落ち、日本人乗客四十七人が死亡した。(その翌日にあったのが、大韓航空機事件だった)。
 また十月十九日には、ニューヨーク株式市場で史上最大の株価暴落――。
 ところで、流行語で思い出されるのは朝からシャンプー、つまり出勤通学の前に毎朝髪を洗うこと称した「朝シャン」だ。ほかに、あの「バブル」もあった。週休二日の会社が増え、金曜日の夜「花キン」の盛り場には、体の線を強調したファッション「ボディコン」女性があふれた時代だった。
 話のオチがつかないな。そうあせっていたところ、先日、家の本棚で眠っていた昨年刊行の雑誌で、別の「朝シャン」の話を読んだことをふと思い出した。
 同誌は特集〈シャンパーニュを楽しむ人生〉のため、ワインジャーナリストやレストラン経営者が参加するシャンパン品評会を朝十時から行なった。眠気と緊張が交じる中、参加者の一人が「朝シャンですね」とひとこと。撮影現場は和やかな雰囲気になった、と書いてあった。
 「優雅で気品に溢れたシャンパンは、ラグジュアリーな飲み物」。フランスはシャンパーニュ地方の、標準以上の製法で造られる発泡性ワイン(スパークリングワイン)のみをシャンパンと呼ぶ。「オーストラリアやスペインのスパークリングワインをシャンパンと言ったりしたら、世間知らずのそしりを免れない。お気をつけあそばせ」。
 この種の言語感覚に、わたしはついていけない。
 所得格差の進む日本ではいま、勝ち組・負け組の階層分化が進んでいるそうだが、この、日経BP社の、雑誌を好んで買い求める読者の大半は勝ち組、エリートサラリーマンだと思う。
 先月、日本で「シャンパン靴磨き」イベントが開かれたことが話題になった。フランスの高級紳士靴メーカーが主催した。クリームで磨いた後、仕上げにシャンパンをすり込む好事家たちがいることは知っていたが、それはパリなんかでの話だった。いよいよ日本上陸か――。ま、負け組のわたしには縁のないことなので別の話題に移ろう。
 黒田慶樹さん、清子さんについてにしよう。十一月十六日付の当地エスタード紙も東京・帝国ホテルでの二人の披露宴の様子を報じていた。使われていたのは乾杯シーンの写真だった。
 乾杯の掛け声を聞いてもすぐにはグラスに口をつけず、清子さんは泰然と周囲に微笑みかけている。堂に入った振る舞いはさすがだ。比べて夫はテレが目立ち気味か。平民と「元プリンセス」の差が、その一瞬にも垣間見えた。
 乾杯のシャンパンはフランスのドンペリことドン・ペリニヨンだったという。
 ところで最後に、ブラジルの事情。国際的評価が高まっているブラジルのスパークリングワインは、製造法もぶどう種も仏系だ。
 大手のシャンドンは仏のシャンパンメーカーが進出して造っている。南部リオ・グランデ・ド・スル州ガリバルディにある十五メーカーのひとつ。
 このほど投入した百七十五ミリリットル入りの「ベイビー」がユニークだ。ストローをさして飲んでもOK。この、気取らない感じ。普段の朝シャン、昼シャンの一本に最適だ。

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