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高齢者集合住宅の暮し=連載(中)=入居後も自立した生活

健康広場

2006年5月17日(水)

 高齢者集合住宅への入居を困難にする要素とは──。住み慣れた自宅を去り、人生の中でためてきた所有物の一部を処分することだ。
 マリーリア・ダエルさん(83)は「悲しかった。物質的な問題でなく、精神的に大きな価値を持っているから」と明かす。居室は、世界中で撮影した家族写真でいっぱいだ。
 四カ月半前に、夫のネルソン・メルシャド・ダエルさん(86)と「レジデンシアル・サンタ・カタリーナ」の定住者八十人のリストに加わった。それまで、夫婦は六十年間連れ添ってジャルジンのアパートに居住。二人の子供がいる。
 マリーリアさんは二十二歳の時から糖尿病だ。二年前に病状が悪化。白内障の手術を受けた。
 「視力の九〇%を喪失してネルソンに依存する身になり、彼に過重な負担がかかっていた。ここにきてそれが無くなった。とても落ち着いていて、自由なの」。
 二人は朝食をともに摂取。ネルソンさんは新聞を読むために、図書室に向かう。マリーリアさんも、携帯ラジオを持って同伴する。その後、妻は物理療法へ。夫は水中運動か、マイカーでAACD(身体障害児援護協会)にボランティアをしにいく。
 マリーリアさんは居室で、夫の帰宅を待つのが習慣だ。「私たちはいつも一緒に行動。外国に住み、世界中を旅行した。めっきり旅行しなくなったと彼が感じているのを知っている。でも私は、旅に出る願望を抑えているのよ。視力の問題で、もう無理だから」。
 夫は妻に妥協し、「彼女を連れていけないなら、私はいかない。ここで生活しましょう」とユーモアたっぷり。二人はテラッソや建物の前を散歩して歩くのが〃日課〃だ。日曜日には子供や孫と昼食を楽しむために外出する。
 親と子はコンドミニオに対して、それぞれの立場が異なっているようだ。原因は、五つ星ホテルの値段でも、貧しく家族から見捨てられた高齢者を受け入れている老人ホームとの類似性でもない。
 ホテル「ソラール・ド・マルケス」のイベント・コーディネーター、ロゼリ・アパレシーダ・ヌネンスさん(49)はいう。
 「すべての人に偏見がある。ここをみにきた高齢者は『まだ必要がない。必要になったら、戻ってくる』。子供の方は罪悪感を持って、『父をここに置いておく勇気があるのか分からない』ともらします」。
 サンタ・カタリーナの重役、クレスチアーネ・カルドーゾ・ビレーロさん(39)によれば、このような状況は変化し始めた。「ここに入るという決断をしているのは、大部分が宿泊者自身ですよ」。
 マリア・ルイーザさん(生物学者)は青年がうらやむほど、予定で詰まっている。先日はジョアン・カルロス・マルチンスが指揮するコンサートを鑑賞。アントニオ・ファグンデスが出演する映画「アス・ムリェレス・ダ・ミーニャ・ヴィーダ」に感嘆した。
 「元気なうちは、止まらない。目の前に現れるすべてのものをするつもり」と力を込める。この心境は最近になってからのことだ。
 「自宅に居住していた時には、このようなことに耐えられなかった。でも、ここにきて意欲的になった。ショーや劇場に向かわせるものがあるのよ」。
 マリーリアさんは「看護婦や介護者に付き添われている人を、毎日見ると意気消沈してしまう。明日は我が身だと思うと恐い」と、マイナス面を指摘。
 ルイーザさんもアリーリアさん同意する。〃幽霊〃を追い払うために、書籍の執筆や音楽鑑賞に熱を入れるそうだ。

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