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連載小説

パナマを越えて=本間剛夫=100

 もし予測できたなら、なぜコロンビア、ヴェネズエラの革命派働きかけなかったのだろうかとゲバラの短慮を怒った。しかし、ペルーの同志たちは既にアンデスを越えてコチャバンバまで降りて来たことはゲバラを勇気づけるだろう。と自分を慰めた。       10 数日後、突然エスタニスラウが訪ねて来た。私はターニャの話で、この国の左翼が君たちの ...

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パナマを越えて=本間剛夫=99

 私の踊りが下手なため、終始ターニャの靴を踏んだが、ターニャは嫌なそぶりもせず私をリードした。バンドが止んで私たちは手を取り合ってソファに腰を沈めた。「タケオ、あなたダンスだめね。こんどはわたしの部屋に来ないこと?」 ターニャは意味ありげに私の顔を覗いた。 ターニャはにっこり笑って私の眼を見詰めて反応を確かめるように私の手を強く ...

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パナマを越えて=本間剛夫=98

 それから間もなく、私がベッドに横になろうとすると電話のベルが鳴った。パウリーナからだった。 エスタニスラウは今ごろたぶんゲバラとドブレに会っていると思う。それから彼女は私がゲバラについて十分な認識がないと見たのか、ゲバラが現在までどんな活動をしているのかを説明した。 ゲバラが医師であること。学生時代、彼は考古学を専攻していたが ...

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パナマを越えて=本間剛夫=97

 待つほどでもなく二人の若い女性が姿を見せ、一人が自分はパウリーナと名乗り、同伴の女性をターニアと紹介した。大使館の中には昼食時で誰もいない。私は面接室に二人を招いて向かい合った。パウリーナはドイツ人といいながら流暢なスペイン語を話した。二人ともアルゼンチン生まれのドイツ系だった。 私はエスタニスラウがこの町に来たはずだがという ...

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パナマを越えて=本間剛夫=96

 私は昨日はサンファンを見、今日はこちらの移住地が立派だと聞いてきました、と率直に答えた。「じゃ、うしろの車にお乗んなさい」と老人は馬を止めてくれた。「わたしたちはアメリカさんのおかげで、ラクな暮らしができるようになりましたです」と満足げに馬に鞭をいれた。 老人は途中、雑貨店にメリケン嚢を担ぎ込んですぐに出てきた。老人はそれから ...

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パナマを越えて=本間剛夫=95

 私は組合事務所の職員たちに勧められて三日を費やして移住地の農家を訪ね廻った。どの家族も過ぎた十年間の苦労を、今では懐かしい思い出として話してくれるのが嬉しかった。 移住者たちはめいめい五〇ヘクタールのジャングルの大半を開拓して見事な農地を経営していた。産物の大部分は隣国ブラジルの市場に出せるようになったという。 小学校も完備し ...

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パナマを越えて=本間剛夫=94

「日本からですか。珍しいですね。日本からの訪問者は年に一人か、全く来ないこともあるんですよ。私たちは日本政府の棄民政策でここに入れられたんです。しかし、自分らの苦労の歴史よりも、現在、母国のすばらしい発展は、そんなことは忘れて日本人としての誇りをもてて辛いを感じる方が強いです……。ここの農産物も年々周りの国々へ出るようになりまし ...

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ガウショ物語=(31)=娘の黒髪=《6》=爺さんの素早い山刀さばき

「おれの方からあの赤毛野郎にくれてやる! 好きなだけ寝てこい、この雌犬め!」 額に青筋を立て、目をギラつかせた隊長は、娘の腕を離すと、ほどけかけた三つ編みをつかんだ。手にぐるぐるとふた巻き、首筋のところまで巻きつけて、頭をぐいと引っ張った……もう片方の手で短刀を引き抜き、ギラリと光る刃を憎い女ののど笛に当てた……。 刃はわずかに ...

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パナマを越えて=本間剛夫=93

 小屋の中は黒かったが、老爺がカンテラに火を入れると闇の中から少年と少女二人の顔が浮かび上がった。青年が老夫婦に私を日本人の友人だと紹介した。私たちは旅装を解いて土間に座り込んだ。老婆は土間の隅で夕食の支度を始めるかと思っていると、黄色い厚い煎餅のようなものを差し出した。「食べろ」というらしく何か呟いた。青年にならって私もおし頂 ...

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パナマを越えて=本間剛夫=92

 そういってエスタニスラウは一枚のカードに二人の女性の名と住所を書いて私の手に握らせた。          ◎ 私は日本を発つ前の十日間、南米における農民の革命運動とはいえない農民の暴動に関する資料を集めて読み漁った。農民といってもそれは白人系に限られたもので原住民はいつも運動の埒外にあった。白人国のチリを除いて総ての国に土地問 ...

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