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連載小説

連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第9回

ニッケイ新聞 2013年2月7日 「いや、わからんね」 「ブラジルは出生地主義を取っているんです。観光客であろうと、移民の子であろうと、あるいは密入国者の子供であっても、ブラジルで生まれた子供はすべてブラジルの国籍を取得することができます。ましてブラジル人女性の子供です。ロナルド・ビッグズの子供もブラジル人なります」 「それで」 ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第8回

ニッケイ新聞 2013年2月6日  児玉もブラジル人の賑やかさに閉口した。しかし、二人ともホテルで十分に睡眠を取ったせいか、それほど気にはならなかった。ブラジル人の席は、どこの席もよく食べ、よく飲んで、話し、笑い声が響き渡っていた。児玉も小宮も、楽しそうにしているブラジル人の輪の中に加わりたい衝動にかられた。  そんな二人に気づ ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第7回

ニッケイ新聞 2013年2月5日付け  美子の口調が急に変わった。ベッドから体を起こすと、児玉の顔を上から覗き込み尖った声で言った。 「私と同じような人間をこの世に生みたくないの」 「俺はそんな生き方をしたくない。君にそんな生き方をしてほしいとも思っていない」 「これは私の生き方なの。どんな生き方をしても私の自由でしょう。寂しい ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第6回

ニッケイ新聞 2013年2月2日付け  しかし、児玉が思っていた以上に性的には大人で、男にリードされるセックスをいつも拒否していた。美子の望むように児玉がベッドに大の字になると、美子は男性自身を口に含み、上目遣いに児玉の表情をうかがっていた。美子は児玉の耐える表情を明らかに楽しんでいた。  冷たいガラスのような視線に耐え切れず児 ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第5回

ニッケイ新聞 2013年2月1日付け  児玉の唇がその白い肌を這っている。 「私を抱いた男は皆、そう言うよ」  児玉を挑発するように美子が言った。児玉は美子の乳首を吸った。美子の呼吸が荒くなる。美子はベッドから身を乗り出すようにして、灰皿に煙草を揉み消した。  美子は甘えるように児玉の首に両手を絡ませ唇を重ねた。  電話が鳴った ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第4回

ニッケイ新聞 2013年1月31日付け  やがて機内への搭乗が始まった。すべての乗客が席に着いたが、空席が目立った。若い技術移民は飛行機に乗るのが初めてなのか、窓側の空席を見つけると離陸前に移動した。  日航機は定刻通り羽田を離陸した。上昇するジャンボ機の窓から東京の夜景が見えた。その美しさに感嘆の声が上がる。しかし、児玉にはそ ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第3回

ニッケイ新聞 2013年1月30日付け  母親は「苦労して大学にやったのに、地球の反対側の新聞社に就職することはないだろう」としきりに嘆いていた。  その夜、美子から電話が入った。 「明日の夜ですね、出発は」美子の声は沈んでいた。 「そうだよ」児玉は事務的な答えを返した。 「御免なさい。明日、両親の離婚裁判の判決が下る日で家庭裁 ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第2回

ニッケイ新聞 2013年1月29日付け  折原は福岡県出身で大学にはいつも下駄を履いてやってきた。山に登る前日はリュックサックを背負い文学部の門から校舎に続くスロープを歩いている姿がよく見られた。背が低いので、後ろから見るとリュックサックから足だけが伸びているように見えた。  遅刻して校舎内を歩いている時、下駄の音がうるさいとあ ...

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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第1回

ニッケイ新聞 2013年1月25日付け 一九七五年 羽田国際空港 「もう、おまえとは会えないかも知れないな」  大学時代の友人、越生孝治が言った。半年ぶりに会った越生はスーツ姿だったが、どこかぎこちなかった。民放のテレビ局に就職し、アシスタントディレクターとして働き始めていたが、仕事柄学生の頃と同じような格好で普段はスタジオを駆 ...

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小説『アマゾン移民・少年の追憶』

 『アマゾン移民・少年の追憶』は本紙6面に、04年5月から9月まで98回にわたって連載された。著者の小野正さんは8月に亡くなったが、その清々しい読後感が話題を呼び、「ぜひホームページにも」という要望が多く寄せられたので、著作権を持つ遺族の了承を得て、広く公開することになった。 1930年、当時十歳だった小野少年の目から見たアマゾ ...

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