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連載小説

連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(46)

ニッケイ新聞 2013年11月20日  機内持込みのバックを肩にかけ、タラップを降り、強い陽をはね返し、地獄の釜の底を思わせる灼熱のコンクリートの上を歩き、管制塔を被った建物に逃げ込んだ。  十分後、荷物が分厚いゴムのコンベヤーに乗って現れた。 「あっ、あれだ、あれです」  二人が荷物をカートに乗せて不安そうにゲートを出ると、A ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(47)

ニッケイ新聞 2013年11月22日 「(ええ! そんなに彼は凄かったのですか!)」 「(拳銃扱いはサンパウロ一でした。練習は全くダメでしたが、如何した事か、実戦になると抜群でしたね)」 「(そのウエムラさんがどうして刑事を辞めたのですか?)」 「(本当は辞めたくなかったのですが、そうせざるをえない事件を起こしましてね、彼、その ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(48)

ニッケイ新聞 2013年11月23日 「(この町に移動して直ぐ、私はホテル玄関の歩哨が四人とは無駄じゃないかと不審に思い、調べてみますと、玄関横のベンチを緑色に塗った時に『ペンキ注意のため歩哨を三人増せ』の命令文書を見つけました。ところが、ペンキが乾いても、歩哨取り消し命令を忘れ、一世紀もの間、歩哨が四人になっていたのです。その ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(49)

ニッケイ新聞 2013年11月26日  迷彩色の軍服の二人の兵が乗ったジープが先行し、アナジャス軍曹運転の副司令官の車が続いた。半時間ほど舗装された道を快適に走った。  まだ暗い早朝で、一台の車にも出合わなかった。まるで、この道があの世につながっているような変な錯覚に陥った。 「西谷さん、密林の中にこんな立派な道があるなんて信じ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(50)

ニッケイ新聞 2013年11月27日 「(そうでしたか。実は、我々もマラリアにかかり、体が衰弱し、食事はおろか水も口に出来ない状態になり、最後に脱水症状になってしまい、私はなんとか助かりましたが、多くの仲間を亡くしました。・・・、それで今回、その仲間達のミサをしようと)」 「(それで、トメアスに!)」 「(そうです)」 「(彼が ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(35)

ニッケイ新聞 2013年10月31日 「おっしゃる通り、この日本の十倍以上もある広いアマゾナスでも極楽浄土は極僅かしかなく、インディオは、それを守るために地獄の戦いをします。アメリカの西部劇で侵入して来た白人をインディアンが襲う場面がありますね、あれは本当です。ですが、映画の様に略奪ではありません。それにインディアンが野蛮だった ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(34)

ニッケイ新聞 2013年10月30日 「ええ、それから数年後、あのビラ・アマゾニアの日本人無縁墓地に対岸から供養され、その最中、河に入水して消息を絶たれたのです」 「ええっ、どうしてそんな事に?」 「謎と云うしかありません。遺体も見つからないままです」 「アマゾンと云う大自然は・・・、一筋縄ではいかないですね」 「そうなんです。 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(33)

ニッケイ新聞 2013年10月29日 「アマゾンと聞けば、どうしてか、熱帯雨林をイメージするのですが、雨が降りっぱなしなのですか?」 「アマゾンと云っても日本の十倍以上の広さですからね、いろいろです。私が入植したトメアスは、年に三、四ヶ月が雨季で、三ヶ月位がまあまあで、後の半年は乾季です。乾季と云っても三日に一度スコールがありま ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(32)

ニッケイ新聞 2013年10月26日 「私がブラジルに着いた日、ジョージさんが強盗から救ってくれたんです」 「へー、そうだったのですか・・・」 「西谷さん、ここからトメアスまで何時間くらいかかるのですか?」 「昔はトメアス配耕地からサンパウロまで、うまくいって四日かかりましたが、今回の旅はサンパウロから北に一千キロ離れた首都のブ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(31)

ニッケイ新聞 2013年10月25日  西谷が驚いた顔で、 「えっ、今はバスが運行されているのですか! で、そのジョージさんの友人とは旅行社の方ですか?」 「いえ、刑事時代の相棒で、二年前までサンパウロ州の小さな町の署長をしていた奴です。如何したことか、今は、連邦警察の北方面の副司令官になっているんですよ」  西谷が目を丸くして ...

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