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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】

 アマゾンで豊饒なのは生態系だけではない。過酷な大自然を縦糸に、極彩色の絵巻のような逸話の数々が横糸として織り込まれ、とても豊かな移民史の大河を形成している。並みいる欧米系植民地がアマゾンの厳しい自然に手を焼き撤退していく中、マラリアなどの病害に耐えて日本移民が根付いてきた八十年の歴史は、一朝一夕には語れない。錚々たる大物政治家が関わる中、アマゾン移住は進められてきた。計りきれないほどの血と汗と涙を苗床に、今では森林農業という世界から注目される新しい〃文化〃も芽吹いている。だが、そこに至る道程は楽なものではなかった。ベレン、サンタイザベル、グアマ、トメアスーなどの東部アマゾンを取材し、そんな移民史の一部を掘り起こした。(深沢正雪記者)

アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《37・最終回》=開拓の延長線上で=自然と人間の関係問う

ニッケイ新聞 2009年10月21日付け  「移民の話は暗いのが多すぎ。実際はケロってしてるでしょ」。普段は飄々(ひょうひょう)と語る汎アマゾニア日伯協会の堤剛太事務局長だが、この一言には真剣な表情をうかべた。「80周年のシンボルは森林農業です。アマゾンに外国人移民が入って地域発展に寄与した間違いのない事実がここにある。これが一 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《36》=日伯の知恵の結晶=森林農業という曼陀羅

ニッケイ新聞 2009年10月20日付け  森林農業の主要な作物は40種類を超えており、それぞれに移民80年分の悲喜こもごもと、長年のインディオや河民の知恵が刻まれている。  例えば、南拓が最初に目指して失敗したカカオ、戦前移民が脱耕資金を得るために栽培した米、戦後に移住地に天国と地獄を見せた胡椒、河民から伝わった現地の各種熱帯 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《35》=環境と取り組む日本人=森林農業やNGO活動で

ニッケイ新聞 2009年10月17日付け  JICA専門家としてアマパー州に派遣された高松寿彦さん(65、長崎)=トメアスー在住=は、森林農業を「農業と林業を、場合によっては動物を飼ったり魚を養殖したりすることも含めて、同じ場所で同時並行的におこなう生業のシステム」と定義する。  彼のセミナーの中で、現地の受講者から「我々は森林 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《34》=「日本人が作るカカオ」=世界から注目浴びる

ニッケイ新聞 2009年10月16日付け  胡椒独特の匂いが強烈に鼻をつく。「いわばこれが金庫代わりですね」。胡椒倉庫を案内したトメアスー組合の歴史に詳しい角田修司さん(67、宮城県)は、天井まで積み重なった60キロの胡椒袋を見上げながら言う。  現在600トンの在庫があり、最大2千トンまで貯蔵可能だ。60年代の胡椒景気の時に建 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《33》=過去を顕彰する墓と森=未来に挑戦する日系学校

ニッケイ新聞 2009年10月14日付け  トメアスーのサントメ墓地には、移住地に支援を惜しまなかった千葉三郎日伯議連会長、南拓を主導した鐘紡の武藤山治社長、開拓最前線で悪戦苦闘した福原八郎南拓社長、胡椒をもたらした臼井牧之助氏、東京農大拓殖科の杉野忠夫初代科長の5人の墓がある。  〃第二の故郷〃トメアスーに自らの墓を建てようと ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《32》=赤道直下のゴルフ場=数奇な運命経た野球旗

ニッケイ新聞 2009年10月10日付け  「ボクはフルーツが大好き。ここは年がら年中、トロピカルフルーツがあるから永住を決めた」。五十嵐栄祐さん(えいすけ、68、新潟)はニチレイの駐在員だったが、65歳で定年退職し、帰国せずに妻子とベレンに住み着いた。  その五十嵐さんが会長を務めるのが、1975年に創立したアマゾン・カントリ ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《31》=民家裏庭の手作り土俵=全伯制覇した北伯相撲

ニッケイ新聞 2009年10月9日付け  パラー州サンタイザベル市の一般民家の玄関で呼び鈴を押して入れてもらい、家を通り抜けて、裏庭の洗濯物をかき分けて奥へ進むと、ようやく探していたものが見つかった。  土俵だ。裏庭とはいえ、生えている樹木はアマゾンそのもの。濃厚な森の匂いのする中に仮設土俵はあった。屋根まで作ってあり、手間がか ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《30》=続く二世の社会進出=政治家や大学教授に

ニッケイ新聞 2009年10月8日付け  パラー日系商工会議所の山田フェルナンド会頭は90年、同州初の日系高官として州商工鉱庁の長官に就任した。93年には日系初の州議としてナガノ・テオドロさんが繰り上げ当選するなど、二世や準二世世代の各界での躍進は著しい。  パラー州に3人いる日系市長の一人、サンタイザベル市長のカルロス・マリオ ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《29》=援協=第3病棟の完成目指す=頼りになる福祉団体

ニッケイ新聞 2009年10月7日付け  ベレンで「援協」と言えば、アマゾニア日伯援護協会(生田勇治会長)のことだ。今年創立44周年で、会員数は1126人(08年、半数は日本国籍者)、職員数は345人を誇る。  アマゾニア病院の他、トメアスーの十字路アマゾニア病院、厚生ホームも運営しており、奥地巡回診療や高齢者診療、福祉活動など ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《28》=32店舗誇る商業界の雄=7千人雇用の山田商会

ニッケイ新聞 2009年10月6日付け  一世の多くは農業に従事したが、二世以降の世代は弁護士、医師などの自由業、建築業、印刷業、農産加工業など多様な分野に進出した。その象徴が山田商会だ。北伯地方で「Y・YAMADA」を知らない人はいないといっていい。  小さな農機具商から始まり、自動車販売、レストラン経営、旅行業などの多彩なグ ...

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