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コラム 樹海

 みずから私は日本人(移民)だから大使になれた、と言う人、田岡功駐日パラグァイ国大使が、東京に赴任して一年になる。さきごろパ国の日語紙が、インタビューした。そのなかで、大使は、面白い構想を打ち出していた▼「これからはメルコスルの時代が来る」と大前提を設け、その時代にふさわしい「日系移住地生活体験ツアー」で日本人観光客を呼び込もうという意表をついた発想である。濃く土の匂いがするツアーだ▼日本人で、南米に旅行できる層は、定年退職してある程度時間とお金のある人たちだ。こういう人たちに、ブラジルなどでは肉食をしてもらい、パラグァイでは日本食を食べ、日本人移住地の生活や、まだまだ濃厚に残っている日本人らしい「心」に触れてもらう、大使はそう言う▼南米のほかの国々にはそれぞれ観光の目玉がある、パラグァイにはそういうのがないので、移住地ツアーが思い浮かんだらしい。各移住地の入植祭に合わせてツアー客を呼び込めれば理想的だとしている▼大使の構想を知って、「待てよ」と思った。ブラジルで肉を食べてもらったり、リオの都会美、イグアスーの滝を見てもらうのはいいとして、ブラジルの日系社会にだって、日系人集団地でのお祭りがあるではないか――つい贔屓(ひいき)めになってしまう▼南米各国には治安の問題がある。そういうのを超えてパラグァイの日系人の人情や、土の匂いは勝てるのか。大使にはまず言い出しっぺとして誘致をやってほしい。(神)

05/12/02

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