《ブラジル》アマゾンで金鉱夫がヤノマミ族襲撃=抗争と栄養失調にコロナ禍=悪化する先住民の住環境

伝統的なヤノマミ族の集落(Foto: Terra Indígena Yanomami/Leonardo Prado/PG/FotosPúblicas/2015)

 アマゾン北部ロライマ州のヤノマミ族居住地では、違法金鉱夫(ガリンペイロ)による襲撃が繰り返されており、銃撃を恐れた先住民達が部落を離れて森に隠れる事態が生じていると14~16日付現地サイトが報じた。
 ロライマ州からアマゾナス州にかけて広がるヤノマミ族の居住地は、国内最大の約千万ヘクタールに及ぶ。ヤノマミ族は約2万7千人で、360以上の部落に分かれて住んでいる。
 ヤノマミ族は昨年11月、自分達の居住地には約2万5千人の金鉱夫が入り込んで違法な金採掘を行っており、集団虐殺の被害に遭う可能性があるとして、下院の公聴会に公開書簡を送った。だが、最高裁による保護命令などにも関わらず、現状は改善していない。
 特に深刻なのは先住民約1万2千人が住むロライマ州北部で、金鉱夫が金鉱への行き来に使うウラリコエラ川沿いにあるポルト・アレグレ市パリミウ部落では、金鉱夫との抗争や襲撃事件も頻発している。
 最近の襲撃事件は13日午後7時半頃起きており、小舟3隻に分乗した金鉱夫がパリミウ部落の傍に接岸して銃を乱射。先住民が反撃せずに森に逃げ込んだのを見た金鉱夫達は先に進んだ。
 ヤノマミ・ウトゥカラ協会(HAY)が14日に行った発表によれば、同地区での襲撃事件は5月10日以降、23回以上起きている。
 同地区での金不法採掘は1980年代から起きているが、ボルソナロ大統領が先住民居住地での貴金属採掘を容認した事で、状況が悪化。近年は金鉱夫による襲撃や抗争も増えている。

金鉱夫の襲撃を受けたパリミウ部落(14日付G1サイトの記事の一部)

 同地区の先住民健康評議会(CONDISI)やHAYは5月10日の抗争後、金鉱夫を介した新型コロナの感染拡大と金の不法採掘を避けるための防疫障壁を設け、金の採掘や森林伐採に使う道具の押収なども行っているが、この事も金鉱夫による襲撃頻発の要因となっている。
 最高裁のルイス・ロベルト・バロス判事は、5月10日の抗争後、連邦政府に先住民保護のための対策を採るよう再度の命令を出したが、法務省による国家治安部隊派遣承認は新たな事件が起きた後の今月14日だ。
 先住民達は、国の対策の遅れはもちろん、国立インジオ保護財団(Funai)が実際的な活動を行っていない事にも苦言を呈している。Funaiが監視・保護活動を行っていない事は、同州選出のシコ・ロドリゲス上議(民主党)が15日に行った、連邦政府とFunaiに対する抗議でも明らかになった。
 同上議は、先住民の保護は国の責任で、州政府に責任を転嫁するのは間違いと批判。「Funaiが支援を怠っているため、市街地への移住を求める先住民も出始めている」とし、「首都や州都、州内の主要道路で先住民を見かける機会が増えるだろう」と語った。
 法定アマゾンでは森林の不法伐採や製材業者、農牧業者との抗争に悩む先住民もいるが、ヤノマミ族の主要課題は、金鉱夫との抗争と栄養失調、コロナ禍だ。金鉱夫の襲撃を恐れる人々は、今も森に隠れ続けている。

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