【日本移民の日2021年】ブラジル人のアメリカ不法入国が再増加=バイデン政権の移民政策緩和を期待?=5月の強制送還者は30人

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 1月20日にアメリカで行われたジョー・バイデン氏の大統領就任式後、アメリカに住むブラジル人を含む不法移民(少なくとも1100万人)は、新しい大統領が約束した大胆な移民政策の実現に様々な形の恩恵を期待している。
 バイデン政権での移民政策転換は、2月2日の大統領令署名から始まった。大統領令は3件で、ドナルド・トランプ前大統領の移民政策の全面的な見直しを指示した。
 中でも注目されていたのは、必要書類を持たずにメキシコとの国境を超えて不法入国した家族に対して採られた、親子を引き離す措置の撤回だ。2月3日付エスタード紙などによると、トランプ政権時代の2017~18年は、親と引き離された子供が5500人以上に上るとされている。
 また、親の所在を確認し、親子を再会させるための責任を負うスタッフの長に、1歳で米国に渡ったキューバ人のアレハンドロ・マジョルカス氏が命じられた事も注目された。同氏はラテン系移民で初の国内の治安維持担当局長となった。
 バイデン氏は推定1100万人とされる不法移民全員に法的な地位を与え、市民権取得への道も開く意向とされている。

時間がかかる移民政策の変更

 ただ、移民政策の変更は容易ではない。急激な移民政策の転換は、中南米からの不法移民の急増を防ぐ可能性があるためだ。3月12日付エスタード紙などによると、バイデン氏の就任後、国境を越えようとして捕まる人の数は増えているという。
 特に目につくのは、不法移民に人道的な対応をと考えるバイデン氏の意向と、コロナ禍による困難などを受けて送り込まれる親同伴のない子供達だ。3月10日は、過去の平均の約2倍の800人が国境に到着。国境付近で保護されている親同伴でない子供は、少なくとも3700人に及ぶという。
 専門家は、国境に着く移民達の増加には、より人道的な対応をと願うバイデン政権の姿勢の変化だけでなく、コロナ禍や昨年半ばに中央アメリカを襲ったハリケーンなどによる経済状況の悪化もあると見ている。

既に入国した人達の扱いは?

 扱いが難しいのは、既に同国内にいる人達についても同じだ。16万人以上いるとされる伯人の一例は、2019年に夫と共にニュージャージー州に来たガブリエラ・リベイロ氏(28)だ。彼女達は6カ月間の滞在のつもりだったが、滞在期間を6カ月間延長後も米国に住みつき、不法滞在(不法移民)となった。
 トランプ政権では合法化の術はなかったというガブリエラ氏は、新政権での移民政策変更に期待している。彼女達は移民問題専門の弁護士の助言を受け、各種の書類を常時更新している。また、種々の料金や税金は全てきちんと支払っており、いざという時のための貯えもあるという。
 ニュージャージー州に住んでいるエロイザ・ペレイラ氏は、42歳の時に解雇されたが、生きていくため、2002年に渡米。市民権を得るために2万レアルを払って、偽りの結婚をする人もいるが、裁判官の前で嘘をつき通す勇気はなく、今に至っているという。
 また幼い頃、親と共に米国に来た「ドリーマー」と呼ばれる人達も、移民法改正でグリーンカードや市民権の取得が可能となり、正式な米国市民となる事を願っている。そうすれば、胸を張って生活できるようになる上に、米国で働き、投資を行ったりするためのビザの取得も可能になるからだ。
 多くの不法滞在者は祖国に妻や子供、両親などを残しており、家族や親族、友人、知人達と会う事もできない事が、常に心に重くのしかかっているという。市民権を得れば、祖国に戻って親類縁者に会う事も、再び米国に戻る事も可能となる。

国境越えを試みた人達を強制送還

 トランプ政権の厳しい移民政策を急激に変える事ができない事は、5月21日に、バイデン政権初の強制送還が行われた事でも明らかだ。
 今回の強制送還の対象者は30人で、ミナス州のコンフィンス空港に到着。ミナス州は米国への不法入国を試みる人達が多い州の一つだ。
 5月22日付エスタード紙によると、強制送還された一人でミナス州東部のサンジョアン・ド・マンテニニャ在住の31歳の男性は、ブラジルで下着類の製造工場で働いていたが、その生活に見切りをつけ、7歳の子供を残して米国行きを試みた。メキシコとの国境には3月5日に到着したが、あっけなく捕まりアリゾナ州の収容施設に連行後、強制送還となった。
 ベロ・オリゾンテ市でタクシー運転手をしていた51歳の男性は、4月21日に国境で捕まり、サンディエゴに連行された後、アリゾナ州の施設に移されたという。
 強制送還された人達は収容施設での食事や扱いに対する不満は語っていない。だが、強制送還された機内では手錠と足かせがはめられ、自由が束縛されていた事には不満たらたらだった。それでも、トランプ政権で強制送還された人達が一様に、食事や施設での扱いにも不満を唱えていた事を考えれば、不法移民への扱いは人道的になってきたといえそうだ。

ブラジルはかつての魅力を失った?

 今回の強制送還は、不法入国を助けると触れ込んで金を稼ぐコヨーテ達が健在である事や、母国での困難を米国移住で乗り越えようとする人が後を絶たない事を明らかにした。この事は、メキシコまでは無事に行きついたが国境で捕まる人や、川を泳いで国境を越えようとして命を落とす人など、不法入国を試みる人達の悲劇が容易には終わらない事も示している。
 ブラジルに夢や安定した収入を求めてくる人達は今も多いが、18年の大統領選でボルソナロ氏が当選した直後には、左派や同性愛者への迫害が起きるかもと考え、国外脱出を考えた若者も相当数いた。
 アメリカでのブラジル人不法移民問題は、コロナ禍や国としての対策不足による経済の落ち込みなども含め、多くの人を引き付ける魅力を持っていたブラジルが、かつての魅力を失ったのかと思わされる状況が続き、他国への移民を考える人が増えている現実を垣間見させる。国境越えを試みて捕まり、強制送還される人達が減るような、魅力に満ちた国への復活を願いたいところだ。

★2020年2月18日米国へのブラジル人不法入国=逮捕者数は1年で10倍超に=入国審査の間は刑務所に=トランプの言いなりの外務省
★2020年1月14日《アメリカ》チャーター便で不法入国ブラジル人送還へ=昨年は1万8千人が逮捕
★2018年6月21日米国不法移民問題=ブラジル人子弟も49人拘束=親と隔離拘束の子供2千人=世界に広がる抗議の波
★2010年8月27日治安悪化が続くメキシコ=麻薬カルテルの抗争頻発=今回は不法移民大量殺戮か=ブラジル人4人も巻き込まれる