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外交官未亡人が寄贈=間部・大竹作品など十三点

4月5日(土)

 「夢のような話です――」。間部学画伯の未亡人よしのさんは、何度も繰り返した。
 三日午後七時半から、イビラプエラ公園内のサンパウロ近代美術館(MAM)で、間部学作品や大竹富江作品を含む十三点が、外交官未亡人ファチマ・サウテーロ・アウヴェスから同美術館に寄贈された。
 同コレクションは、やはり高名な外交官だった義父の故ラウロ・ソウテーロ・アウヴェス氏と、九八年に癌で急死した夫エデウアルド氏が収集したもの。特に、今回寄贈された作品の大半を占める間部画伯の九点は画集にも収録されておらず、また、大竹作品二点は画壇デビュー後の試行模索から独自スタイル確立する時期(主に六〇年代)の、貴重な作品群だ。
 「主だった美術品はすべて寄贈してしまい、家の中はすっかり寂しくなってしまいました」。ファチマさんは重荷を下ろした開放感とともに、夫との思い出の詰まった作品群との惜別の思いを語った。
 「パリに赴任している時に話合ったんです。もし夫に万が一のことがあれば、すべて寄贈しようって。私はそれを実行してるだけです」とさも当たり前のように語る。
 大竹富江インスチトゥート役員の大竹リカルドさん(富江さんの次男)「こんなこと滅多にありません。通常、エリート層は特権を活かして作品を〃得る〃ことはあっても、ただで手放すことはない。今回寄贈した分だけでも、百万レアル分の価値はあるでしょう。本当に立派な方です」と力説した。
 画家の若林和男さんは「実際、非常に珍しいことです。MAMには今まで間部作品はなかった。ブラジル近代美術コレクションを集めたこの美術館に、間部作品が入ることは、大きな意味がある」と語った。
 ファチマさんはMAMだけでなく、サンパウロ美術館(MASP)、サンパウロ州立絵画館(PINACOTECA)、宗教美術博物館、リオ地図博物館、外務省にも寄贈しており、合わせて美術作品六十五点、中国製陶器二十三点にもなる。
 間部画伯の三男・有剛さんも「ラウロさんがNY総領事をしていた六〇年頃に、間部はワシントンのブラジル大使館に四十日間ぐらい滞在させてもらっています。その頃に描いた作品が多いです。これらが外交官と共に世界を巡った後に、MAMに寄贈されたことに、深い縁を感じます」と感慨深そうに述べた。
 現在MAMでは、これら寄贈品を特別展「Colecao Lauro Eduardo Soutello Alves」として広く公開している。

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