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念願のブラジル公演=演劇の維新派=松本主宰語る=「移民」に関心もサンパウロ市で会見

2005年10月15日(土)

 二十一~二十三日、サントス市のSESC劇場で日本未公開の新作「ナツノトビラ」を上演する維新派の出演者とスタッフ約五十人がサンパウロ市に着いた。
 十三日、演劇研究センター(CPI)の稽古場で主宰者・松本雄吉が会見し、「十五年前からブラジル公演を考えていた。私の作品は移民をテーマにすることが多いので、今回は大変意義がある」と語った。
 国際交流基金サンパウロ日本文化センターとSESCの共催。同センターにとっては、一九八五年にサンパウロ市で開催した「南米若手歌舞伎公演」以来「最大規模の舞台公演」(センター筋)になる。
 日本のある都市の夏の一日を、少女の夢や行動を通して描いた作品だ。夢か現(うつつ)か、にわかに区別のつかない幻想的な十シーンから構成される。
 「日本人は四季の中でも夏に対して特別な印象を持っているのもテーマにした一つの理由。お盆に死者がよみがえる季節であり、原爆が落とされてたくさんの人が死んだのも夏だ」
 劇団は一九七一年に松本を中心に結成され、日本人の身体性を生かした表現と野外劇で評判になった。大掛かりな美術装置を設営することでも知られる。
 本番一週間以上前にブラジル入りしたのもそのため。野球場や離島の工場跡など屋外を舞台にすることが多かったが、「夏の強い日差しがつくる影を演出したかったので、今作では屋内を選んだ」と説明した。
 舞台美術と並んで劇団の個性となっているのが「喋らない台詞、歌わない音楽、踊らない踊り」と言われる表現形式。「誰もやっていないことをやりたい。現代の多様性を表現するのは範疇から飛び出さないといけない」と言い切る。
 会見場に居合わせたCPI代表でブラジル現代演劇界の巨匠アントゥネス・フィーリョは「松本の作品を、十二年前に大阪で野外公演を見て感激した。雨が降っていたが、ダイナミックな演出だったのを覚えている」と称え、「演劇の枠を超えている。鑑賞できるのは革命的なことだ」。そう、持ち上げた。
 ブラジル公演は以前からの念願だった。出身大学も劇団の拠点も大阪市だが、生まれはブラジル移民の多い熊本県。移民への興味について、「わたしのほとんどの作品に移民の姿が出てくる。日本人は漂白への憧れがあるし、非定住に対しロマンチズムを抱いている。いろんな視点で漂流をテーマに描いている」
 世界中からの移民船が着いた港サントスは、そんな劇団にとってふさわしい上演地であると言えそうだ。
     ◎
 入場料一般二十レアル。サンパウロ市内のSESC(ヴィラ・マリアーナ、ポンペイア、ピニェイロスなど)で購入可。開演は二十一、二十二日が午後八時半。二十三日は午後八時。各公演日にはサンパウロ市から鑑賞バスツアーも。
 午後三時にSESC本部(パウリスタ通り119)集合。維新派についてのミニ講演を聞いた後、出発。六十七レアル。申し込み・問い合せは電話11・3179・3700(SESC本部)。基金から聞いたといえば、十レアル割引き。

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