ホーム | コラム | 樹海 | 自己保身の思いが目を曇らす

自己保身の思いが目を曇らす

 ブラジル史上最大規模の抗議行動が起きた13日、ジウマ大統領やその側近は予想を上回る参加者数に驚いたと14日付伯字紙が報じた。彼らの予想では昨年3月の規模を上回る事はないと踏んでいたのに、蓋を開ければ、軍警発表で360万、主催者側発表で600万超の人々が街頭に出た▼ジウマ氏は同日、「抗議行動は民主主義が認める正当な行為」と述べたものの、これ程の数の国民が大統領罷免を求め、反政府、反ルーラといった声を上げた事に慌てた現・前大統領は、ルーラ氏を閣僚に据え、同氏逮捕や大統領罷免回避、経済再建の三つを狙うという策を急速に進めた▼罷免回避や財政調整案の議会通過を図るために考えられていたのは大統領府総務室長官職だった。だが、経済に口を挟むためには官房長官にという事で落ちが付いたのが16日。平和裏に行われた抗議行動は、僅か3日後に踏みしだかれたと言ったら言い過ぎか▼ジウマ、ルーラ両氏は、前大統領を閣僚にすれば同氏の逮捕やパラナ連邦地裁でモロ判事に裁かれるのを回避できる、連立与党がまとまれば罷免請求を否決できるし、財政調整案や増税案も承認され、外貨準備高を崩して国が抱える負債の縮小も図れる等々、多くの事を期待している。だが、果たしてそうは問屋が卸してくれるか▼14日付伯字紙には、現政権は統治能力をなくし、政治家達も国民の代表としての機能を果たしていないとの批評もあった。現・前大統領が自己保身を願って国民と乖離した事が、抗議行動の規模や国民の声を読み間違え、良識者が呆れる策をとらせた原因なら、二人共物笑いの種とされ、落ちるところまで落ちるしかないだろう。(み)