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中島宏著『クリスト・レイ』第25話

 なぜ、そのようなことが可能になったのか。そこにまた、新しい疑問がわいてくる。彼は、特に宗教に興味を持って、それを探求するというようなタイプではないが、しかし、このように日本とキリスト教との関わりを聞かされると、その辺りをさらに知りたいという心境になってくる。彼にとっては、日本人そのものが一種、神秘的な存在でもあり、そういう人々 ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第24話

「ところでね、アヤ、今までのあなたの説明が本当に僕に分かったのかどうかということですが、つまり、ここに移民してきた人たちというのは、日本では珍しいキリスト教信者のグループということですね。そういう人たちがこうして同じ所に入って、生活を共にしているということなのですね。そういう解釈でいいですか」 「そうね、その考え方で間違いないわ ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第23話

「だからね、言ってみればここに移民としてやって来た人たちは、みんな同じ宗教を持っているし、みんな親戚というか、家族みたいなものなの。たまたま、その家族全部が、キリスト教のカトリック信者だったということね。そういうことで、ここに住んでいる人たちは、日本にいるときからのキリスト教信者で、そのことは、このブラジルに来てもまったく変わら ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第22話

「そうね、その通りよ。私もずっと、もの心ついたときから、いや、それ以前からもうキリスト教信者だったわね。私の家は代々みんなそうだったし、私が生まれた町や地方でも、ほとんどがそうだったわ」 「ということは、日本でもかなり多くのキリスト教信者がいるということですね」 「いえ、そういうことじゃないの。日本でのキリスト教信者は、ほとんど ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第21話

「ところで教会の話ですけど、いったいこれは、どういう教会なのですか。町にあるキリスト教の普通のカトリックの教会とは大分違うと思いますが」 「そうそう、その話を今日はするはずだったわね。話が横道に逸れてしまって、ごめんなさい。でも、最初にこういうことを、つまり日本語のことを説明して置くことは必要だと、私は思っていますから、悪く思わ ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第20話

「ということは、アヤにも、友だちのような喋り方でいいということですか。うん、それだったら分かります。でも僕の場合は、日本語でその、友だちと話すような話し方を知らないのです。今まで、丁寧な話し方しか勉強してきませんでしたから、先生にそういうふうに話すことはできても、友だちのように話すことはできません」 「あ、そうか、そう言われれば ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第19話

「こんにちわ。大分待たせたかしら。一応、時間通りに来たつもりだけど」 「いえ、アヤ先生、私の方が約束より早く着きましたから。私が待つのは当然です」 「そう、それならいいけど。ところで、どうしょうかしら、二人で歩きながら話をしますか。それとも、どこかに座って話した方がいいかしら」 「あ、それは、先生にお任せします。私はどちらでも構 ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第18話

 この日、マルコスは普段着ではなく、一応、訪問着を着て、格好を付けてきている。別に大したことではないが、一応、きれいに洗った格子のシャツに、ベージュ色の木綿のズボンを履いている。牛皮で作った茶色のブーツも、普段はあまり使ったことはない。  要するにこれは、毎日曜日に教会へいく時とか、招待されたパーティーにいくときのような、よそゆ ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第17話

 自分にそう言い聞かせつつも、なかなか思い通りにはいかない。困ったものである。  アヤとの約束は、そのような意味での緊張感を伴うものであった。 正直なところ、この時、彼女に対する淡い慕情のようなものが、マルコスの中で芽生えつつあった。彼はそのことに対して驚きつつ、狼狽している。このような感情が生まれてきたことに対して、慌てている ...

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中島宏著『クリスト・レイ』第16話

それほどこの教会は、他とは違った佇まいを持ち、不思議な雰囲気を漂わせている。最初は、この教会の秘密を探ろうという目的があったのだが、マルコスは日本語にのめり込んでいったために、そのことは二の次というような感じになり、まあ、そのうちに分かってくるだろうというふうに考えが変わっていった。 はっきり言えば、さして緊急な話でもなく、うっ ...

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