ホーム | 文芸

文芸

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(87)

 マサユキは責任、義務について少しはわかる年になっていた。まだ幼いので時間はかかったが、母の教えを少しずつ身につけていった。それは房子には心丈夫なことだった。その考えが理解できれば、弟たちの手本になれるだろう。それはどこの日本人家庭でも同じだ。長男は下の兄弟たちの手本になるものなのだ。  外国人はそうした日本人家庭の価値観は理解 ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(86)

 アイスクリーム屋をはじめて一年半のちに、3番目の子が誕生し、家族は喜びにあふれた。房子の出産を手伝うのは3度目だから、正輝はプロの産婆ぐらい機敏に働き、お産の助手として最高の腕を見せた。ナオシゲと名付けたのだが、あの奇妙な幼児の呼び名をかえるやりかたで、ヨーチャンという名でよんだ。(ヨというはじめの音節はパウケイマード耕地で生 ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(85)

 夜にはタバチンガからもってきたジャカランダのテーブルを囲んで正輝は友人と話せたし、歩いて仲間のところに行けたし、人生や方針や故郷について心おきなく話すこともできた。日本をでて以来こんなに友情を強めたことはなかった。元一はその人柄ゆえに、アララクァーラの沖縄人からだけでなく日本人からも一目おかれていた。他の日本移民の集団地とちが ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(84)

 メーガーじいさんはグァタパラ耕地から、そのころアララクァーラ市に属していたリンコンに移った。正輝が町に移ったころ、前川はジョセ・ボニファシオ街699番地に住んでいて、すでに大勢の子どもがいた。長女はマサコという日本名。長男のジョゼは津波でもメーガーでもなく城間ゼーという名でよばれた。城間はヲトの結婚前の名前だ。つづいて生まれた ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(83)

 当時のブラジル時報紙は 「モトゥカでは入植者はすぐにコーヒー樹を植えつけ、棉、米、トウモロコシ、そして、蚕の飼育をはじめた。病気や債務に打ち勝ち、文字通りなにもなかった状態から現在の基礎をつくりあげた」 と報じている。中心となったのは馬場直という男である。  植民地創立以前、コーヒー園での契約をおえた4家族が地主エルミニア・フ ...

続きを読む »

『月刊ピンドラーマ』=4月号

 コジロー出版のブラジル情報誌『月刊ピンドラーマ』4月号が出版された。  「グルメ情報」では、海鮮料理や定食が魅力的な日本料理店3店を紹介。コラム「開業医のひとりごと」では、食と「旬」について語られている。その他、連載小説、イベント、求人情報等が掲載されている。  日系書店、日本食材店等で配布中。問い合わせは同出版社(11・32 ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(82)

 3日目に、また、症状がぶり返した。はじめのときよりは軽いが、まったくあの時と同じ状態をくり返した。はじめ寒気をもよおし、唇が紫色に変わり、吐き気がして、震えがくる。そのあと、熱があがり、汗をかき、喉が渇く。そして、気が静まり、眠る。房子は、はじめのときと同じぐらい時間がかかったように感じた。  一家には相談できる相手がいなかっ ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(81)

 子どもが沖縄人のグループだけに閉じこもるのをおそれ、両親は一生懸命日本語を教えていた。体が冷えて肌がカサカサしていた。唇はわけのわからない青い色になっていた。歯をガチガチさせ、体を縮め、額にしわができるほど、顔をゆがめている。痙攣を起こし、房子が計ってみると脈も弱くなっていた。ところが急に今までの症状がなくなった。  すると震 ...

続きを読む »

連載小説=臣民=――正輝、バンザイ――=保久原淳次ジョージ・原作=中田みちよ・古川恵子共訳=(80)

 ブラジルに親類がもう一軒増えたことは、房子にとって、ここで生きる苦労をやわらげてくれるものだった。自分より何年か前にきた人たちと同じように、がんばろうという気持ちが強くなる。最近の移民は初期の移民よりずっと有利な立場にあるとも感じていた。初期の移民は周囲から孤立し、見捨てられたと思う人が多かったに違いない。それ以降、大勢の日本 ...

続きを読む »

連載小説=臣民=――正輝、バンザイ――=保久原淳次ジョージ・原作=中田みちよ・古川恵子共訳= (79)

 頭は肝臓と同じように栄養価の高いスープを作るために自分に確保した。頭はハヤトウリのスープではなくケールのスープを作るだしにするためだ。盛一も正輝もケールを日常食としていつも畑に絶やさなかった。  腿肉とご飯の他に、誕生祝に沖縄特有の菓子がふるまわれた。サアター アンダージーという菓子で、これは砂糖をまぶした丸いドーナッツのよう ...

続きを読む »