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米州首脳会議の隠れた中心議題=懸念される米中貿易戦争の影響=パラグァイ在住 坂本邦雄

米州首脳会議の様子(Foto: Juan Manuel Herrera/OAS)

米州首脳会議の様子(Foto: Juan Manuel Herrera/OAS)

 リマ市発、アンドレス・オッペンハイマー記者の記事によれば、今回の南北アメリカ首脳会議で関心をひいた一つのテーマは、特に議題には無かったが、各国首脳間の内談で、アメリカと中国の貿易戦争が、地域に与え得る影響の問題が取り上げられ、盛んに議論された事だった。
 ラ米諸国の高官、ビジネスリーダーやエコノミスト等によると、トランプ大統領の中国に対する貿易関税の脅威・脅迫は地域経済に深刻な被害を及ぼすと言う。
 首脳会議は、主に汚職・腐敗の削減とベネズエラの危機問題に対する、米国及びラ米諸国間の協力体制の強化の件に集中するものであった。
 しかし、直前になってトランプの会議出席中止の報は、冷水を浴びせられたようなもので、ある首脳の中には参加を取り止め、または日程を短縮した大統領もいる。
 トランプは、最近約25年間において、米州首脳会議に出席しなかった初めてのアメリカ大統領で、かつ近来、就任後の初年度中に一歩もラ米の地を踏む事が無かった、最初の合衆国大統領である。
 白亜館は、シリアの緊急問題を身近にフォローする為に、ワシントンに踏み止まる必要があったと主張するが、ここ(リマ市)では誰も信用しなかった。
 現に、前任者のオバマ大統領は2011年に、ブラジル訪問中にリビアに対し軍事攻撃を命じた。そして、多くの元アメリカ大統領は、外遊中に国際危機問題の対処、処置に当った。
 今回の南北アメリカ首脳会議の前にはかなり多くの解説者が、米中貿易戦争はラテンアメリカ諸国に有利に影響し、コモディティーの輸出およびその機会の増進に益すると、投機的に観測していた。
 しかしもっぱら、IFM・国際通貨基金のアレハンドロ・ワーナー(Alejandro Werner)、ラ米担当理事は、「経済戦争は必ず世界経済を落ち込ませ、ラ米の輸出需要の減少に繋がるだろう。経済戦争では勝者も敗者も有り得ないのだ」と云う。
 「メキシコ及び中米諸国は、輸出のアメリカ市場への依存度が高いために、少なからぬ被害を被り、アメリカ在住者のそれぞれの本国家族への送金も減り、かつ合衆国自体の観光事業にもネガティブな影響を与えるであろう。
 なお、単に経済戦争の脅威だけでも、既に不安を喚起しており、かかる環境は多くの産業投資事業の抑止を招く他に、件の貿易重課税の脅迫が重く圧し掛かっている。
 しかし貴方が幸いにして、重課税問題の対象外の企業のCEO(最高経営責任者)であって、将来も同じ事業体制が守れるなら、あえて新たな投資の冒険はしないだろう」とA・ワーナー氏は語る。
 米中貿易戦争の脅威の噂は、去る3月9日にトランプ大統領が、鉄鋼25%及びアルミニュウムに10%の輸入税の課税措置を発表した時から飛び交っている。
 それからは、米国と中国は互いに何度も駆け引きでエスカレートし、1400点もの各種物産に双方報復課税を宣し、アメリカは大豆も含めて、その対象にされている。
 今回の首脳会議の席上、ラ米諸国の農産業部門の挑戦に関して、各国大統領を前にして講演した、アルゼンチンの主要大豆輸出業者の一人、グスタボ・グローボコパテル(Gustavo Grobocopatel)氏は、中国のアメリカ大豆に対する増税措置は、地域に益する事はなく、各国市場の不確実性及び消散性を招くと語る。
 つまり、「早速はアメリカに影響するが、長期的には世界経済全体が被害を喫する事になる」と云う。
 トランプ大統領の不規則で変り易い商業政策は、ラ米諸国首脳の大きな頭痛の種である。
 昨年、トランプはアジア及びラ米の12カ国が構成するTPP・環太平洋経済連携協定から脱退した。
 しかし、トランプは先週、米国は改めて同協定への復帰を検討する可能性もあると暗示した。
 そして、その翌日には自国に有利であるなら、同じく、メキシコ及びカナダとの自由貿易協定の再検討もやぶさかではないと、トランプは表明した。
 この地域首脳会議から展望する限り、世界は正に無秩序に、脚を上にして引っくり返っているが如しだ。
 合衆国は大衆迎合主義、反自由貿易主義の、予測不可能な信頼できない国に変じた反面、ラテンアメリカの複数の主要大国がかえって今では、思慮、分別の道義の講義に当っている様で、誰がこのような事を仮にも、以前は予測が出来ただろうか? 世の中は変われば変わるものである。

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