インド洋大津波で、日本人旅行者の安否不明者が、当初六百人余の規模と広報されていた。NHKの国際放送が毎日、生存している人は(日本の家族へ)すみやかに連絡するように、と呼びかけていた▼近年は、旅行代理店を通さず、家族にも行く先を知らせず、海外旅行している日本人が多いのだ▼昨年、イラクの反米勢力に殺害された一日本人青年は、オーストラリアに旅行したのだが、いつの間にかイラクに飛んでおり、命を落とした。今度の数百人の安否不明者というのは、この青年のような人たちなのだろう▼NHKの放送を視聴していて、脈絡もなく、わたしたち「移民」のことを考えた。移民の留守家族は、ごく普通の場合、ブラジルに渡った息子のことを心配した(する)。手紙で近況知らせよ、と催促しても「便りのないのはいい知らせ」を決め込み、応じなかった。戦後は、単身渡航の比率が高かったから、親、兄弟たちの心配は尋常でなかったはずだ▼個々の留守家族の心配ラッシュが一段落して後、日本政府の仲介による人捜しが始まった。もちろん、動静を全く知らせていなかった移民が対象だった。これが、多くの場合、遺産相続が絡み、ブラジル在住者に権利放棄をさせるための人捜しと知って「ははーん、そんなものか」▼大津波後の「連絡求む」は、肉親の心底からの心配だろう。移民の無沙汰と違い、現代のように、通信手段が発達しても、しない人はしない。他人でさえ何とかしてあげたい、と思うのに。 (神)
05/1/14