ニッケイ新聞 2008年11月20日付け
芥川賞作家である吉行淳之介は、酒場における女性との接し方の難しさを「もも膝三年尻八年」と説いた。「桃栗三年柿八年」の諺をもじったものだが、触らずとも眼福なのは、万人の意見一致するところ▼ドイツの下着メーカーが企画した美尻世界一を決めるコンテストで、ブラジル代表のメラニエ・ヌーネス・フロンコウィアッキ(20)さんが優勝した。賞金のほか、保険も掛けられたというが、蚊に刺され、玉に瑕となれば、保険金が下りるのだろうか。下世話で失礼▼あるアンケートではーとの統計を挙げずとも、ブラジル人の原理主義に近い尻礼賛は街角に立てば見て取れる。ヨーロッパの芸術作品では、女体像でその美しさを様々に表現するが、日本では春画においても肢体の曲線の美しさの方が尊ばれるのは興味深い▼幅広い評論活動で知られる山田吾郎氏の著書『百万人のお尻学』では、「尻に敷かれる」という成句が西洋語にないことを指摘しながらも、古来から哲学者や勇者が女性に馬乗りになられる逸話を紹介、「高邁な思想が世俗の色香に押しつぶされるさま」を興味深い対比として挙げる▼先週サンパウロ市であった和太鼓集団「鼓童」の公演。褌姿で太鼓を乱打する姿は、演奏というより神事のようであった。奉納相撲もあるほどで、日本において男のそれは世俗と対極の立場にある▼そういえば、美尻世界一男性部門は地元フランス代表の銀行員、サイバ・ボンボテさん(27)が選ばれた。こちらが眼福の向きもあろうが、尻を端折ったわけではなく、字数の都合ということでご容赦願いたい。 (剛)