ニッケイ新聞 2009年4月28日付け
日本にも13世紀から16世紀にかけて村上水軍が活躍し、中国や朝鮮半島を始めアジアの諸国を襲った倭寇がいて恐れられたが、21世紀の今でもアフリカのソマリア沖では海賊が暴れまくっている。日本のタンカーや輸送船も襲われているし、先ごろはアメリカの船長が拉致され大騒ぎになり、改めて対策の強化が叫ばれている▼この海域には米仏独を始め中国も海軍を派遣し、日本の海上自衛隊も護衛艦「さざなみ」「さみだれ」が航行の安全のために懸命である。これまでにも日本の自動車輸送船やタンカーを護衛し、シンガポールの船から依頼され海賊らを追い払ってもいる。補給港になっているジブチ(紅海に面した人口80万人の国)に入港するとグレ大統領は「大国日本の艦船の参加は平和への貢献」と称賛している▼アデン湾を航行する10%は日本が関係するものであり、年間に約2000隻が物資搬送に励んでいる。しかも、この海域は現在も危険であり、ドイツ海軍の艦船が小型船に乗った海賊に銃撃されるなど事件は多い。防禦の手段を持たない民間の船なら文字通り命を賭けた航海なのである。だが、日本は法規制が厳しく、武器使用や外国船の護衛も禁じられているのが実情である▼こんなバカらしい話が国際的に通るはずがない。そのために政府・与党は海賊法案を提出したのだがやっと衆議院を通過し、参院では否決されるだろうが、間違いなく今国会で成立する見通しである。民主や野党は防衛問題になると、無理難問ばかり申し述べるが、集団的自衛権など抜本的な安保論議に熱を注ぐべきではないのか (遯)